宝石について② 人工宝石

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前回に続いて宝石についてのお話。今回は「人が作り出した宝石」すなわち人工宝石(模造宝石)についてピックアップしてみる。

貴石・半貴石についての話はコチラ

模造宝石

模倣宝石(もほうほうせき)とは、天然の宝石や貴石を模して製造された物質や素材である。その性質により、合成宝石、人造宝石、模造宝石に分類される。

かつて錬金術から端を発した科学技術は、西暦2022年現在においてなお、金を合成することまでは至っていない。しかしルビーならば可能であり、ベルヌーイ法と呼ばれるその手法は今から120年前には既に確立しており、工業用途向けに大量生産が行われている。

合成宝石(人工宝石)

合成〇〇と付く宝石は、「合成宝石」(人工宝石)とカテゴリされるもので、化学的組成や性質は天然の宝石と基本的には同一である。ただし製法上、電子顕微鏡で覗くと模様等が天然宝石とはやや異なった特徴があり、これが識別方法となる。

よく見るのは、合成ルビー、合成サファイア(合成コランダム)、合成トパーズ、合成スピネルあたりである。この辺は安価で流通量も多く品質も工業的に安定している。

合成ルビー(上) 合成コランダム(下)

たとえばこれは合成ルビーと合成コランダムの結晶である。化学式組成は天然のものと同様で、微量のクロムが含まれていることからブラックライトにも蛍光反応を示す。

合成ルビー 上:研磨前 下:研磨後

表面を研磨するとこの通りで、いつもの宝石然とした輝きを放つ。そんなわけで、この結晶を大まかに切り出してから、カット・研磨していくといつものルース(裸石)になる。

合成ルビー
合成ブルーサファイア

合成宝石は物質としての純度、完全性という意味では実は天然宝石よりも勝っている。ただし完全であること=美しさ とは必ずしもならないのがミソで、インクルージョンやクラック、色ムラなどもないので面白みに欠ける。なんといっても、長い年月をかけて地中で生成されたというロマンがない。

とはいえ、天然宝石に比べればはるかに安価で入手できるので入門用としては最適であるし、50カラット超えの超大粒ルースも気軽に入手できるのは魅力的。100カラットを超えるクソデカサイズのトパーズやアクアマリンを手に取れるのは合成宝石ならでは。

合成宝石(ルビー コランダム トパーズ アレキサンドライト CZ) ※右側の500円玉はサイズ比較用

人造宝石

自然界には存在しない人口物質でありながら、宝飾用途として優れた性質を持つ物質である。代表的なものにはCZ:キュービックジルコニア、YAG:イットリウム・アルミニウム・ガーネットなどがある。

CZ:キュービックジルコニア

CZ(キュービックジルコニア)

ジルコニア(二酸化ジルコニウム)に希土類酸化物などを添加した立方晶安定化ジルコニアと呼ばれる物質のことで、少し紛らわしいが天然宝石のジルコン(ZrSiO4)とは別の物質となる。

屈折率と分散率が高く、モース硬度8.5と実用十分の硬度を備えることから宝石用途として非常に優れた人工物質であり、ダイアモンドの代替品として宝飾用に広く用いられる。製造方法が確立されているため、美しい輝きとは裏腹に安価に入手ができる。

YAG:イットリウム・アルミニウム・ガーネット

YAG(ツァボライトカラー イエローベリルカラー パライバカラー)

他にはYAG:イットリウム・アルミニウム・ガーネット(Y3Al5O12)が挙げられる。これは本来はレーザー発振装置などに用いられる物質だが、工業用途の他に宝飾用ルースとしても少数流通している。パライバトルマリンやカナリーイエローベリルを模した色付けが可能で、モース硬度も8.5と高い。

なおこのYAGは「ガーネット構造」をしているだけであり、自然界に存在するアルマンディンガーネット(いわゆる普通のガーネット)(Fe3Al2(SiO4)3)とは全く関係のない別の物質である。

モアサナイト(モアッサナイト)

モアサナイト(アイスブルー)

モアサナイトはダイアモンドの代替石として用いられる合成宝石で、これは屈折率・分散率が共にダイアモンドよりも上回る物質であり、スペック上はダイアモンドを超える輝きを放つ物質である。

それでいてモース硬度も9.5とダイアモンドには及ばないものの、2番目に硬い鉱石であるルビーやサファイアなどのコランダムを上回っており、宝飾用途として申し分ない性質を示す。


ただし隕石からしか産出されない極めて貴重な鉱物であるため、天然のモアサナイトが市場に出回ることはない。つまり一般で販売されるモアサナイトは100%合成宝石である。

あまりにもレアすぎて合成宝石しか入手できないが、合成宝石ゆえに現実的な価格で入手が可能である。とはいえ製造コストがまだ高く、CZの100倍くらいはするようでそれほど一般化はしていない。

模造宝石

合成宝石が発明されるされる前に用いられたもので、カットスチールやマーカサイト(※模造宝石用語)などがある。これは技術的には高度で審美性も高いが、鉄製素材を用いたために保存性に難があり、現在では廃れてしまっている。

今でも残っているものではラインストーンがある。スワロフスキー社のものが有名。これは鉛(酸化鉛)を配合して光の屈折率と重量を上げたガラスで、鉛の比率が30%以上のものをフルレッド・クリスタル(full lead crystal)と呼ぶ。

また色付けも可能で、微量のウランを含む淡黄色や淡緑色のガラスをウランガラス(ワセリンガラス)と呼ぶ。このガラスは紫外線を照射すると蛍光性を示すこと、材料が材料なので現在は生産が難しいことから、アンティーク品としてオークションなどで人気がある。

ウランガラスのビーズ
ウランガラスの蛍光反応



また宝石と宝石(ルビーとガーネット)、宝石とガラス(サファイアとガラス)というように異なる素材を貼り合わせる方法があり、2枚のものをダブレット、3枚のものをトリプレットという。

もっともこれは独自の工芸的価値や審美性を持たず、もっぱら偽物として使われることが多い。水中に入れると境目がわかりやすくなって容易に判別ができる。

合成トルマリン(トリプレット)
合成トルマリン(トリプレット)側面
合成トルマリン(トリプレット)側面(水中より)

まとめ

合成宝石はblueが好きな光り物のジャンルのひとつである。ラボで工業的に生産された宝石は、確かに品質が画一的で個性がなく、長い期間をかけて生成されたロマンこそないものの、それ自体が人類の歴史であり、文化と技術の進歩、叡智の結晶といってよい。それはそれで別のロマンを感じる。

ごく一部の貴族階級や富裕層の特権だった宝石を、一般庶民も手に取って楽しめるようになった、裾野が広がったということは実に素晴らしいことで、ガチ勢やプロならともかく、blueみたいに程々のにわかオタクやコレクターにはこれで十分すぎる。むしろもったいないくらいだ。

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