この間、エリザベスコイン(ブリタニア・メープル)や合成石(CZ・合成ルビー)について記事を書いたのですが、鉱物の話は少しややこしいことが多いので、いわゆる「宝石」の定義について少し紹介をします。写真はあまりありません(すみません)
⇒人工宝石(模造宝石)についてはコチラ
宝石とは
宝石の定義
宝石とは「宝になる石」である。一見手抜きな説明だが、実は学術的な定義が存在しないためこういうざっくりした言い方になる。
具体的には、色、輝き、透明度、模とは様、形、希少性などを備えた美しい鉱物「等」のことである。鉱物の定義としては、以下のような特徴が挙げられる。
1.天然に生成された無機質物質である(×合成宝石)
2.化学組成が一定である(×岩石)
3.原子が規則正しく並び結晶構造を有する(×ガラス)
4.活動中に生物が含まれるものではない
よく似た物質にガラスがあるが、ガラスは結晶を持たない液体が粘度を増し、常温で固体化している物質(アモルファス)である。原子や分子が規則正しく整列しておらずバラバラな状態であるため、結晶構造を取らない。この点において鉱物と区別される。
鉱物「等」…?
という含みを持たせているのは、鉱物でない物質も宝石あるいは天然石として一般的に認知され、ショップなど扱われているものも多いからである。たとえば以下のものは「鉱物」としての定義を満たしていないが、「宝石」や「天然石」として扱われることがある。
オブシディアン | ガラス | 天然に生成されるガラスであり、火山岩の一種。黒曜石と呼ばれる。ただし「ブルーオブシディアン」は人工石であり天然のものではない。いずれもショップ等ではもっぱら天然石として扱われることが多い。 |
ラピスラズリ | 岩石 | ラズライト(青金石)を主成分としてソーダライトやアウイナイト(藍方石)、パイライト(黄鉄鉱)などの複数の鉱物の凝集体。単一の結晶構造ではないため「岩石」となる。 |
アンバー | 有機質 | 長い月日を経て天然で生成された樹脂の化石。琥珀と呼ばれる。 |
オパール |
鉱物 |
一言でいうと水を含むため水晶になりきれなかった石英。本来規則結晶構造を持たないアモルファスであるが、成分であるシリカが何故か規則正しく並んいることがあり、この部分がオパール独特の遊色効果を引き起こす。 本来は鉱物の定義には当てはまらない天然石であるが、国際鉱物学連合ではオパールを正式な鉱物としている。これもうわかんねぇな。 |
実際ところ、「こまけえこたぁいいんだよ」の精神なのか、割とあいまいというかおおらかだったりする。天然に産出されてきれいならそれでOKというノリに近く、ショップなどでは「天然石」や「パワーストーン」などとまとめて1ジャンルとして扱われていることも多い。
というかオパールくんフリーダムすぎて草
一体なんなんだ君は。
宝石の分類
宝石は性質や希少性などにより「貴石」と「半貴石」に大別される。これも学術的な定義が存在しないためざっくりした言い方になる。
貴石
定義はまちまちであるが、一般にはモース硬度7以上の宝石がこのカテゴリとなる。
宝石はその美しさがさることながら、傷のつきにくさ(=硬さ)も格付けの基準としてみなされる。自然界の至る所に存在する石英(Si02:二酸化ケイ素=水晶)はモース硬度7であるため、これを超える高度を持たない石は砂塵で傷がついてしまい、永続性に劣るからである。
といいつつも明確な定義があるわけでもなく、割とガバガバである。美しさや希少性、個性を備えた石はモース硬度7より低い石もここに入ることがあり、翡翠(ヒスイ)やオパール、クリソベリルキャッツアイなどがその例による。
四大宝石
ダイアモンド、ルビー、サファイア、エメラルドのことを差す。いずれも美しさ、硬度、希少性、歴史を備えた一流の宝石であり(エメラルドはちょっと耐久性に難ありだが)、ダイア+赤青緑という基本色を抑えていることから、普遍的な価値を持つ石である。
イマイチピンとこない人はポケモンのタイトルを連想すると覚えやすい。要するにディアルガ、グラードン、カイオーガ、レックウザのことである。逆に覚えにくいよww
パルキア「解せぬ」
なおアレキサンドライトも含めて五大宝石とすることもある。これらに名を連ねる石は宝石グレードの天然石だとかなり高価となる。
希少石
四大宝石ではないが、それに匹敵する美しさや個性、価値を持つ宝石を希少石という。インペリアルトパーズ、パライバトルマリン、ルベライトトルマリン、カナリーイエローベリル、グランディディエライト、ツァボライトなどはこのカテゴリに入る。
またタンザナイト、スフェーン、カラーチェンジガーネットなどモース硬度が7以下であるが、個性や美しさ、希少性を備えた透明石もこのカテゴリに入ることがある。
貴石か半貴石か微妙な石
古くから宝石として知られて歴史や知名度があるものだとトパーズ、ガーネット、アクアマリン、ジルコン、スピネル、トルマリンあたりだろうか。これらは一般的に「宝石」として認知されている石ではあるが、先の貴石や希少石よりも格が落ちるため半貴石として扱われることがある。
トパーズやトルマリンなどはモース硬度が7を超える石であるが、色や産地によって区別されることがあり、希少石に該当するものを貴石として扱われ、それ以外を半貴石として扱われることが多い。
アクアマリンやスピネルもモース硬度が7を超えるが、アクアマリンは格上の石にエメラルドがあり、スピネルもルビー・サファイアの代替石として扱われた歴史があるためか、半貴石されることが多いようだ。この辺は非常に紛らわしい。
一方でこの定義に当てはまらないものも多くあり、例えばジェダイト(翡翠)、オパールなどは硬度7以下であるが貴石扱いされる。この辺は美しさや希少性、知名度や歴史などによる総合的な評価によるものなので明確なルールはなく、かなりガバガバ。
半貴石・天然石
一般的にはモース硬度7以下の宝石はこちらにカテゴライズされる。石英よりも柔らかいため取り扱いには少々注意が必要で、傷や欠けには気を遣う。「貴石」に含まれない石は大体コチラになるわけだが、非常にざっくりした定義であるためバラエティに富んでいる。
価値が低いということは実はメリットでもあり、第一に安価で入手しやすい。これらの石であれば、10カラット以上の大粒のものであっても現実的な価格であるため頑張れば入手することができる。宝石は美しさと価格が必ずしも比例しない。これは絵画とか骨董品なんかにも通じるものがある。
そしてもうひとつが天然モノである可能性が高いということである。採算的にわざわざ合成やイミテーションをする意味がないので必然的に天然物の可能性が高くなる。ただし加熱や浸潤、着色、放射線照射などの加工はされていることがある点は注意を要する。
希少性や硬度が低く、安価であることから軽く見られがちだがユニークで美しい石も多い。blueさんはフローライトが好きである。不透明石だとダルメシアンジャスパーがお気に入り。
半貴石の分類
一般的にはモース硬度が7以下の石をいうそうだが、前述の通りガバガバ定義で例外も多い為、blueは「貴石もしくは希少石以外の宝石」という非常にざっくりとした解釈でいる。
A.貴石か半貴石か微妙な石 (モース硬度が7以上) |
トパーズ アクアマリン カラートルマリン ジルコン スピネル |
B.古くから知られる透明石 (モース硬度が7程度or以下) |
ガーネット ペリドット ムーンストーン クンツァイト モルバタイト |
C.価値の高い不透明石 |
ターゴイズ(トルコ石) ラピスラズリ(瑠璃) |
D.生物由来の石 | パール(真珠) コーラル(珊瑚) アンバー(琥珀) |
クオーツ(希少性× モース硬度7以上〇)
水晶(石英)、アメシスト(紫水晶)、シトリン(黄水晶)をはじめとするクオーツは透明感がある石でモース硬度が7あるが、希少性が低いため安価で入手が可能。水晶はブラジル産、ローズクオーツはマダガスカル産が有名。
クオーツ(主成分SIO2) | |
水晶(石英) | 水晶玉などに使われる無色透明の水晶。主成分はSiO2(二酸化ケイ素) |
アメシスト(紫水晶) | 微量の鉄イオンによって紫色に発色したクオーツ。 クラスター状のものがよく見られる。 |
シトリン(黄水晶) |
アメシストを加熱すると黄色に発色する。天然モノは少ない。 |
ローズクオーツ (紅水晶) |
微量の鉄、マンガン、チタンによって桃色に発色したクオーツ。 マダガスカル産のものは品質が高く、スターが出ることもある。 |
スモーキークオーツ |
灰色の水晶。発色原因は不明だがアルミニウムイオンが関係しているらしい。 黒色に近いものをモリオン(黒水晶)と呼ぶ。 |
ルチルクオーツ | ルチル(金紅石)をインクルージョンに含むクオーツ。 |
※ホークアイ | クロシドライト(青石綿:アスベストの一種)に石英がしみ込んでできた鉱物。 鉄分が酸化して黄色くなったものをタイガーアイと呼ぶ。 |
※カルセドニー | SIO2を含んだ溶液が岩石の隙間などに沈殿し、形成された微小な石英の集合体。 縞模様の出るものをアゲート(瑪瑙)・オニキス 不透明のものをジャスパーと呼ぶ。 |
クオーツは透明性と強度はあるが、屈折率が1.46と低いためダイヤやCZに見られるようなプリズム効果はあまりない。水の屈折率は1.33であるが、水中にこれらの石を入れると反射しないので見た目が同化してわかりにくくなることからも屈折率の低さがわかる。
このためオーバルやブリリアントなどのカットを行うと反射が少なく、素直で素朴な感じになる。blueはかえってこれはこれで個性だと思うので結構好きである。CZ(キュービックジルコニア)がいくらでも手に入る現状、白水晶のカットルースはかえって珍しく、新鮮味がある。
しかし色がついているアメシストやシトリンはともかく、透明のままの白水晶では地味なのか、実際にはカボションにされることが多いようだ。マダガスカル産ローズクオーツもスター効果が出ることからもっぱらカボションが多い。
クオーツはどちらかというと原石そのままで楽しむことが多い石かもしれない。水晶やアメシストはクラスター状のものがよく見かける。またルチルクオーツやガーデンクオーツ、オイルインクオーツ、ハーキマークオーツなどバリエーションに富んでいる。
天然石(希少性× モース硬度7以上×)
このあたりは一般に「天然石」としてカテゴライズされているもので、雑貨屋さんやお土産屋さんなどでも入手できる。種類が多いのでとりあえず持ってるものを列挙する。
半貴石(希少性× モース硬度7以上×) | |
透明石 | クオーツ アゲート オニキス カルセドニー オブシディアン フローライト カルサイト |
不透明石 | ソーダライト ロードナイト ブラックトルマリン ブラックオブシディアン ハウライト スギライト アラゴナイト ラブラドライト アマゾナイト タイガーアイ ジェイド ジャスパー ブラッドストーン |
金属結晶 | ヘマタイト(赤鉄鉱) パイライト(黄鉄鉱) チャルコパイライト(黄銅鉱) カッパー(自然銅) |
先にも書いた通り、宝石の美しさは価格と比例しないのでこのあたりの石にも魅力的なものはいっぱいある。むしろありすぎて金欠になるレベル
まとめ
この記事では天然宝石についてまとめてみたが、実はまだ合成石(人工宝石)について紹介できていないのでまとめきれていない。これについてはコチラで紹介します。もうちっとだけ続くんじゃ。
このブログは別にパワーストーンブログではなく、光り物オタクが粛々と光り物を紹介していくブログなので、さらっと触れて終わるつもりだったはずが、思いの他熱が入ってしまった。語るに落ちるとはまさにこのこと…。
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