【レビュー】AF NIKKOR 20-35 F2.8D ①生麦JCT

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▶カメラ

大三元レンズの偉大なるご先祖様。老いてますます盛ん。

スペック

焦点距離 20-35mm レンズ構成 11群14枚
最小絞り F2.8 絞り羽根枚数 7枚
最大絞り F16 寸法 約82×94mm
最短撮影距離 50cm 重量 約585g
マウント ニコンFマウント フィルター径 77mm
フォーマット フルサイズ オススメ度 ★★★☆(3.5)

どんなレンズ?

フィルム時代のニコンFマウントのレンズで、20-35mmという広角を撮影できるズームレンズ。20mm、24mm、28mm、35mm F2.8を1本に悪魔合体させたようなレンズで、当時の高級レンズとして高い人気を誇ったという。

フィルム時代のレンズというわけでオールドレンズになる。相方のNIKKOR 35-70 F2.8Dと同様、F2.8の明るさを実現した高級ズームレンズで、現在の大三元レンズの原型となった偉大なレンズだ。Zマウント現行品のNIKKOR Z 14-24 F2.8 Sはこのレンズから数えて4代後のレンズにあたる。


当時D80を使っていたときに銀座のニコンハウスで購入したもので、現在は一線を退いて防湿庫に眠っている。そんなわけで実用品というよりはロマン枠のレンズだ。

…といいつつ、blueは広角レンズをあまり持っていないので現役で使っていたり。

精研削非球面加工

このレンズを語る上でのポイントは第一面の前玉に精研削非球面レンズが使われているということだろう。かの有名なNoct Nikkor 58mm F1.2、広角版ノクトと言われるAi AF Nikkor 28mm F1.4Dと同様の技術が使われている。どちらもニコン使いの間では知らない人がいないプレミアレンズだ。

サジタルコマフレア(四隅の光源が流れてしまう収差)を補正には非球面レンズが有効であるが、現在のようなガラスモールドでは製造できないため、わざわざ硝材から削り出しで作成していたそうだ。

このレンズは往年の名玉と同じ技術で作られている。ズームレンズなのでサジタルコマフレアの補正こそされていないが、画質の向上には寄与しているものと思われる。

縮緬塗装

レンズは表面仕上げもなかなか凝っていて、縮面(ちりめん)塗装というものが採用されている。布地における縮緬(経糸に無撚糸、緯糸には強撚糸を使うことで表面にシボを出したクレープ織り)に似た表面処理がなされている。

これを拡大してみると…。


スゲーえぐかった。なにこれすごい。

なんで?どうして?滑り止めでこれやる必要ある?レンズの性能に関係ある??と思ってしまうが、ニコンのこういう性能そのものに関係のない部分までこだわるクセは昔からだ。「いい仕上げしておいたから大事に使えよ!」という粋を感じる。


このレンズが発売された当時は1993年でバブル崩壊直後となる。かの有名なベンツ哲学の「最善か無か」の思想はこの時代に生み出された多くのプロダクトから感じ取ることができるが、これもその例になる。

ちなみに表面強度はあまり強くないので優しく丁寧に取り扱ってあげる必要がある。

ニコンD800に装着

D800に合わせると丁度良いサイズ感。広角ズームは標準ズームよりも一回り軽くて小さいので、合わせてみると意外とコンパクトな印象がある。640gという重さも最近の感覚だとむしろ軽いまである。

インナーフォーカスなので焦点距離にかかわらずレンズ全長は変わらないのも印象がよい。


昔のDタイプレンズで、本レンズやAF NIKKOR 85mm F1.4Dような高級ラインのものは縮面塗装仕上げ(さっきの等高線みたいなエンボス塗装仕上げ)がなされているが、カメラに装着するとなかなか雰囲気が出る。この昔ながらの佇まいは渋くて良い。

日本刀の鞘で、乾漆塗(乾燥した漆をパラパラと振りかけて石目塗:艶消しに仕立てたもの)ものがあるのだが、あれに似た凄みを感じる。こういう要素は最近のレンズにはなかなかない。

入手方法

フィルム時代のFマウントレンズなので当然ディスコンになっており、中古品を探して入手することになる。

逆光に弱いこと、当時はAPS-Cがスタンダードだったことからデジカメ用途としてはあまり人気がない。ズーム倍率がさほど大きくないこと、Dタイプなのでミラーレス機ではAFが効かないことなどから市場価値はあまり高くなく、割とお手頃価格で入手できる。


レンズフード問題

このレンズの専用フードはHB-8というバヨネット式のものになるが、これがクセモノで、外れやすいため紛失や破損していることが多く、ディスコンから相当年数経過しているので単体入手が難しかった。かといって適当なメタルフードをかぶせるとフルサイズだとケラレてしまう。

ただし現在では互換品があるためこれを購入するとよい。このレンズは逆光に弱いので使うつもりならあった方がいい。


このレンズで撮った写真

生麦JCT

首都高速神奈川7号線(横羽線)の生麦ジャンクション。近くにある巨大建造物を探すとまずこれが思い浮かんだ。

広角レンズって使うシチュエーションが限られている気がしていて、山とか海とか星とかになるじゃないですか。じゃあここ川崎鶴見横浜界隈でそういったのが楽しめそうなポイントがあるかといえば…


──ないんだな、それが。

blueは広角レンズをあんまり持っていなくて、手持ちのレンズのレビューが進んできてこのレンズも触れるときはどこに撮りに行こうか考えたのだが、なんか考えてるうちに色々忙しくなったり金なくなったりで、結局チャリで行ける範囲の近所になってしまった。

貴様写真ブログなどと抜かしておきながら意地でも東京神奈川を出ないつもりだろ…。この横着者め!
ギクッ!


といいつつ、この生麦JCTは最近パワーアップしたのでなかなか撮影し応えのあるスポットだ。首都高速横浜北西線が2020年3月に開通した関係で、ループが増えたためだ。

これは神奈川県の道路事情においてかなり画期的なことで、大黒JCT(湾岸線)─生麦JCT(横羽線)─港北JCT(第三京浜)─横浜青葉JCT(東名)が横一文字すべて繋がったことを意味する。

当然この工事はかなりの大事業で、8年前はまだ港北JCTの工事中で養生をしてたのを覚えている。生麦JCTも5年位前までやはり同じように工事をしていたのだが、3年前に完成してようやく完全体になったのである。

歩道橋

国道357号線をまたぐ歩道橋だがかなり物々しいことになっている。首都高速に隣接しており、交差点を渡す歩道橋はその高架のすぐ下を通る形になるためかなり圧迫感がある。

この景観もパワーアップしており、4枚目のように上を見上げるとジャンクションがバイパスされており、なかなかカオスなことになっている。

狩場まで20分

三ッ沢まで10分 (午前)3時のおやつは文明堂~(意味不明)

歩道橋を超えて大黒ふ頭方面からとった写真。このアングルも非常に迫力がある。夜でも車の往来が絶えないため光の軌跡が自然と入り込む。


このすらりと伸びる高架が新しくできた横浜北西線になる。これを逆方面、東側に進んでいけば大黒ふ頭へと行くことができる。ここも定番の夜景スポットとなるのでいずれ行ってみたい。

このレンズで撮っていて気付いたこと

意外と画質が良い

このレンズは1993年製と30年前の製品だが、解像度は現在でも通用するレベルのものが出る。三脚なのでF5.6くらいで撮っているのもあるが、画質そのものは不満点は少ない。画質だけなら後継の17-35mm F2.8 Gを凌ぐとも言われている。

ちなみに手持ちで絞り開放(F2.8)で撮ってみても解像感は保たれている。色乗りもよく、コントラストもはっきり出るのでオールドレンズにありがちな眠そうな印象は皆無。

逆光に弱い

このレンズは逆光に弱い。APS-Cでは本来の画角で撮影できなかったこともあって敬遠されていた。このレンズはデジタル一眼レフカメラとは相性が悪いというのが一時期の通説にもなっていた。

今回のような夜景撮影ではその弱点はあまり目立っていない。しかしゴーストは出ているのであまり強いとは言えない。光源を入れる撮影も向いていないため構図で気を遣う場面も多少あった。

寄れない

最近の広角レンズと異なり最短撮影距離は50cmとかなり長いため、被写体に寄ることはできない。後継の17-35 F2.8G、更に後継の神レンズとして名高い14-24 F2.8Gは28cmであることを考えると、これは不便と言わざるを得ない。

パースペクティブを活かした撮影をしたい場合は他のレンズが適任となる。

まとめ ※茶番注意

超高層ビルやジャンクション、ダムなどの巨大建造物はたまに撮影したくなるのだけど、この趣味ってなかなかカミングアウトしづらくて地味に困ることがある。(カメラ自体がそうだけど)

会社の飲み会で新卒で入ってきた陽キャっぽい女の子が、「私フィルム(チェキ)やるんですよ~」「blueさんニコン使ってるんですよね!?何撮るんですか~?」って聞かれたのだけど、ちょうどその前日にこれを撮影していたもので、


「え、ジャンクションとか撮ってる…」

と素で答えてしまい、すっごい微妙な空気になってしまった。これがウワサに聞く事実陳列罪ってやつか!よかった、なんとか致命傷で済んだ!!


咄嗟に聞かれてテンパったのはあったけど、けど結構頑張った方だと思うよ!?可愛い子にいきなり話しかけられて気に聞いた返しとか俺言えねえよ…。けどジャンクションは幾分まだマシで、

「電線とか撮ってる…」

とかウッカリ答えてしまった日にはもうやべぇやつ扱い直行だった。「音楽はどんなの聞くの?」とか「芸能人でいうと誰がタイプ?」とかこの手の質問昔から無理なんだが、ちょっと回答作った方がいいかもしれない。コミュ力ぅ…。

なお電線撮った回はコチラ

まとめのまとめ

まとまっていないのでこちらで締めます。同じレンズでスナップ撮影をやった例。Z7はオートフォーカスが効かないのでマニュアルフォーカスで撮ってみた。


相方のAi AF35-70mm F2.8の作例はこちら。このレンズと共に大三元レンズの走りとなったレンズで、アルミ鏡胴に直進ズームというオールドスタイルな一本。


関連商品

ニコンFマウントの広角ズームの系譜を紹介。広角レンズユーザーってジャンクションとか好きそう(引きずってる)

AF-S NIKKOR 17-35mm F2.8G

本レンズの後継品。テレ側の焦点距離が3mm伸びた。たかが3mmと思われるが、広角側の3mmはかなり大きい。また最短撮影距離が28cmと大幅に短縮され、超音波モーターを搭載したことでミラーレス機でもAFが効くため、実用的なのはコチラ。

後継のAF-S NIKKOR 14-24 F2.8Gがあるので影が薄いが、いざとなれば35mmで標準撮影もこなせるのは便利。


AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8G

本レンズの2代後のレンズ。ネ申、いわゆるゴッド。

名実ともに神レンズとして有名で、ニコン使いなら一度は効いたことがあるレンズになるだろう。山登ラーや星景撮影から絶大な信頼を寄せられる名レンズ。blueは広角をあまり持っていないが、Zマウントへの移行で多少手を出しやすくなった感があるのでちょっと興味がある。


代わりに望遠端が24mmに後退してしまったが、これは標準ズームが進化してAF-S NIKKOR 24-70mm F2.8Gとなったから。実際このレンズもそうだが、超広角レンズでわざわざ望遠側を使うことはあまりないためこれは英断と言える。

前玉が大きい凸型になっており(いわゆる出目金レンズ)、フィルターを装着することができないのは注意。落としたら多分氏ぬ。しかしその欠点を差し引いても高い評価を得ているレンズとなる。

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