【レビュー】San Martin SN005G

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中華時計

スペック

年代 2021年頃? ムーブメント 自動巻き 杭州6460
型番 SN005G 精度 +30秒程度
直径 40mm 風防 サファイアガラス
厚さ 13mm 防水 20気圧防水
ラグ幅 20mm おすすめ度 ★★★★★(5.0!!)
機能 GMT 備考 傑作!

どんな時計?

ペプシカラーのGMTであるが、これは1950年代に生産されていた最初期のGMTマスターをモデルアップしている。ガラス製ベゼルインサートがトレードマーク。

サンマーティンはオリジナルに対してかなり正確かつ高品質なモデルアップを行うオマージュメーカーで、他のメーカーとは一線を画するクオリティに定評がある。その分高価であり他のメーカーの2~3倍くらいするので名実ともに高級品といえ、レプリカといった方が相応しいかも。

ミニカー界隈でいうAutoArtみたいなポジションのメーカーであり、インターネット掲示板では「サンマ」とか「さんまちん」とか呼ばれている。ガチメーカーなのにかわいくて草。

ディティール

ダイヤル

トリチウム塗料の使われた腕時計は経年によってダイヤルやインデックスの色合いが段々黄色っぽくなってくる。塗料から発する放射線で焼けるためである。

R社のオールドモデルはダイヤルのインデックスが黄色い。これは当時ルミノバが存在せず、代わりにトリチウム塗料が塗られていたからである。トリチウムは放射性物質であるため被ばくのリスクがありまた半減期があるため夜光に寿命があるため現在では使用されていない。


サンマーティンでは当然ルミノバになっているのだが、このルミノバの色合いがなんとも絶妙であり、とても雰囲気よく仕上げられている。ガラス製のベゼルインサートも相まって、まるで本物のアンティークウォッチと錯覚してしまうような趣深い艶感をたたえている。

また小技として、黄色いルミノバに合わせるべく針やダイヤルメモリをゴールドに変更しているのもポイント。ここは本家のオリジナルとは異なる部分なのだろうけど、超英断といえる。この色合わせによる一体感と艶感の醸し出す古き良きアメリカ感はすごい! いやこの子中国製なんだけども。

ベゼル

このモデルの一番の特徴である。最初期型のGMTマスターはベゼルインサートにプレキシガラス(ベークライト樹脂)が使用されていた。

まるで七宝ガラスのような美しい仕上げだが、ヒビや割れによる破損や紫外線による劣化が多かったのか、同じ初期型でも後期ロットでは早々にアルミ製に切り替えられた。そのためかなり珍しい仕様といえる。

サンマーティンはこの珍しい仕様をモデルアップしている。しかもただモデルアップするだけではなく、素材をサファイアガラスに改良しているため傷や紫外線に強くなっている。色合いも絶妙で、ペプシカラーというよりはまるで朱紺鉛筆に近い。

blueはこういうレトロな外観を保ったまま中身は最新式になってる改造は大好物である。

ガラス

ボックスサファイアガラスを採用。同素材のベゼルインサートとの相性も抜群で機能上も問題なし。

無反射コーティングは当然ながら付いていない。これ!超英断その2。このオールドな佇まいに無反射は合わないよ。最善の選択をさらりとこなしてしまうあたりサンマーティンは伊達ではない。さすがレプリカガチ勢なだけはある。

ブレスレット

オールドモデル特有のリベット式ブレスレットになる。この前のPAGANI DESIGNのものと違い本物のリベット式ブレスとなっており、穴が貫通している。

コマを抜ける箇所はビーバレルBB0038のような一対の長ネジと受ネジによるネジ式になっており、そのまま精密ドライバーで回しても頭が回ってしまうため、もう1本の精密ドライバーを溝に差し込んで固定しないと抜けずかなり面倒くさい。また受ネジが非常に小さくポロ落ちして無くしやすい。

この不便な仕様はもちろんわざとやっていて、きっと本家がこういう仕様だったのだろう。他にもブレス両端のポリッシュ仕上げとなっている箇所が実は別パーツになっている。こんなとこ普通にサイドポリッシュでいいだろうに。

オールドをモデルアップしているADDIESDIVEやPAGANI DESIGNもさすがにここまではやっていない。わざわざコストをかけてまでこんな面倒くさい仕様やってるサンマーティンのガチ勢っぷりには凄みすら感じられる。

ケースバック

本家同様のっぺらぼうである。ただしヘアライン仕上げではなくサンレイ仕上げとなっている。レトロな外観のせいで忘れられがちだが防水性もきっちり20気圧防水を確保している。アンティークウォッチと異なり新品なので水を気にせずラフに使えるのは魅力。

San martinはブレスやケースを見るにシャープな仕上げを好むようである。見ての通りエッジは立っており、ヘアラインは強めに入り、パーツ間の遊びも少ないのでキッチリカッチリ精密機器といった趣きがある。もうちょっと丸めてくれてもいいけどね。

STEELDIVEの「まぁこんな感じでええやろ」という適当感のあるブレスは嫌いじゃないが(むしろ好き)、San martinの硬派な雰囲気、ツール然とした仕上げもプロダクトデザインの方向性が明確で魅力的に思う。実際手に取ると手間がかかっているのが分かる。

リューズ

ブランド名に反してサメの絵が描かれている。そこはサンマじゃねーのかよ!(訴訟)

この時計で好きなところ

それはこの夜光。この古臭い見た目と裏腹に滅茶苦茶よく光る。こういうレトロな外観を保ったまま中身は最新式になってる改造は大好物である。(本日2回目)

そしてこの夜光であるが、他のオマージュとは一線を画する美しさなのである。

これ!これすごい!めっちゃエモい!!

下地のルミノバから発せられた光がサファイアガラス内で分散して、ベゼル全体がぼんやり発光するのである。窓際にはネオンサインが彩り、カウンターの片隅ではジュークボックス、ピンボールが据えられたアメリカンダイナーみたいな、そんなR66のような匂いを感じられる。

アメリカよりもアメリカンしてる中国製時計…。アメリカンとは一体…うごごご!

外箱

安定の弁当箱である。ADDIESDIVEでもSTEELDIVEでも見た光景であり、blueがこの光景を見るのは数えて3社目であるが、もはや箱には1銭もかけたくないぞという鋼鉄の意思すら感じられる。

開けると厚手のジップ袋に時計本体が入れられていた。本体はスポンジで巻かれておりADDIESDIVEやSTEELDIVEに比べると幾分か好待遇である。さすが2倍の値段するだけはある。

入手方法(※アリエク)

(※画像から商品ページへ飛べます)

実はこのSN-0005Gは2024.6現在廃盤品になってしまっている。代わりにアップデートされたSN-0005-G2が後継品となっている。


主な改良点としては、24クリック双方向回転ベゼルが採用されたこと、サファイアガラスにARコーティングが付いたこと、ブレスがジュビリーブレスになったことなど。またダイヤルはルミノバがC3(グリーン)とBGW9(ブルーグリーン)に選べるようなった。

これによってSN015と同様の完成度を備え、より高みに近づいたといえる。BWG9のインデックスは白いので、この記事で紹介している旧型と意外とイメージが違うため悩ましい。

まとめ

この時計はとにかく雰囲気作りが素晴らしい。ビーバレルBB0038に匹敵するレベルで作りこまれている。それでいてサファイアガラス、GMT、20気圧防水、夜光と機能性も申し分ない。

本家に忠実な方向性は守りながらも改良すべきところはしっかり改良されており、コンセプトとテクノロジーを高いレベルで両立させたプロダクトデザインは、正しい意味で「オマージュ」と言えるだろう。随所随所の作り込みには作り手のすらも感じられ、まさに傑作と呼ぶに相応しい一本である。

そして夜光。この感じはblueの貧困な語彙力ではちょっと表現できないくらい素晴らしいので、興味のある人はぜひ買って手に取ってみてほしい。時代の匂いがするって凄い。

関連商品

こちらはGMTのついてないタイプ。質感は本機と同様ガチで作り込まれており、かつ38mmという小ぶりなサイズ感が素晴らしい。ADDIESDIVEでも同じモチーフの時計があるが、こちらの方がより忠実に本家を再現している。

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