筆者お気に入りの一振り。装備すると攻撃力が上がるぞ。
スペック
メーカー | ハバキ | 真鍮(金メッキ) | |
全長 | 約mm ※実寸 | 柄長 | 八寸五分(約25.5cm) |
刃渡り | 二尺四寸(約72cm) | 柄巻 | 牛革・捻巻 |
元幅 | 約mm ※実寸 | 鍔 | 鉄製:桜馬 |
先幅 | 約mm ※実寸 | 縁頭 | 真鍮製:桜肥後 |
元重ね | 約mm ※実寸 | 目貫 | 馬二双図(真鍮製・色上げ) |
刃の形状・材質 | 真鍮製・樋なし | 鞘 | 黒呂塗(ウレタン塗り) |
刃紋 | 鬼神丸国重(二十刃紋) | 現行入手 | 可能(2024年現在) |
重量 | 約1190g(鞘を払って) | 備考 | ※オーダー品 |
どんな刀?
居合を初めてしばらく経った頃、筆者の趣味を全部ぶっこんで作成した一振り。十数年前に秋葉原の武装商店さんにオーダーにて誂えてもらった。
見た目やロマンに全振りして作ってもらった刀なので居合道での実用性はあまり考えられていない。……はずだったのだが、仕様違いのため図らずも使いやすく仕上がってしまった。しかし珍しい仕様が多いため交換修理が難しく、ガシガシ使えなくてちょっともったいない……。
ちなみに鬼神丸国重というのは、刀身の刃紋の名称(要するに商品名)がそうだからで、特に深いこだわりはない。ブログタイトルを書くときに困ったのでとりあえず拝借している。
ディティール
姿
一見すると黒呂塗鞘のオーソドックスな一振りに見えるが、柄巻きは茶色の牛革になっている、また縁頭、ハバキと切羽は金メッキがなされているなど、作者の光り物趣味が随所にぶっこまれている。
居合刀(模擬刀)はオーダーで好みの長さやデザインを選べるので、お気に入りの一振りが欲しい人は吊るしの刀を買うよりもオーダーで作ってもらった方が満足感が高くなる。長さ、柄巻き、鞘などはタダで仕様変更できるものもあるので、黒一色がつまらない人は全力でお勧めする。
ただし、オーダーには「納期が発生する」「返品ができない」というデメリットがある。気絶しながら気長に待てばいいのだが、せっかちさんや居合を今すぐ始めたい人はネックとなる。
ただ、オキニの一振りはそれらのデメリットを全消しできるくらい素晴らしいものなので、こだわりのある人はぜひオーダーをお勧めしたい。3か月~半年くらい気絶していればそのうち送られてくる。
刀身
刃紋は鬼神丸国重。これは前述の通り商品名(仕様名称)で、オーダーでこれを指定するとこの刃紋になる。大乱れ刃が特徴の派手目のパターンで見栄えがする。人斬り包丁みたいな妖しい雰囲気がよい。よく見ると二重刃紋となっており、沸(にえ)が表現されている。
この刀は鎬(しのぎ)刀身のため樋(ひ)が入っていない。そのため通常の刀よりも重く、また振っても樋鳴り音がしない。音が鳴らないため、刃筋が立っているか(正しい振り方ができているか)が判別できないため、初心者にはちょっと勧めづらいかもしれない。重いし……。
そんなわけで、居合道の稽古に用いる刀としては樋があった方が都合がいいのだが、もし実戦で刀を使わざるを得ない状況になった場合、振った時に音が鳴ってしまうと気付かれてしまうため、やはり無い方がいいのだろう。
刀身の材質
また写真からは伝わらない部分なのだが、この刀で一番イレギュラーなポイントで、刀身が真鍮押出材でできている。そのため見た目の割に重たい。この見た目で美濃坂 同田貫拵よりも50gも重く、なかなか骨が折れる。(折れたら振れないんですがそれは……)
通常、居合刀(模擬刀)は砂型鋳造で成形された亜鉛合金材が用いられる。メーカーによって超硬合金とか硬質特殊合金とか呼ばれている素材がソレで、要はアルミを含んだ亜鉛合金となる。亜鉛合金の比重は6.6前後でアルミを含むため実際はこれより小さくなる。
一方の真鍮は銅と亜鉛の合金であるため重く、比重で8.45程度となる。鉄の比重は7.86であるため真剣よりも重いことになる。重さもさることながら平置きにすると自重で段々と曲がってくるため、現在の居合刀の材質としてはあまり使用されていない。
一方でメリットもあり、刀身表面が亜鉛合金よりも綺麗でしかも経年劣化が少ない。亜鉛合金は結晶粒間腐食を起こすため、クロムメッキが薄かったり剥離した部分から酸化が進み、経年によって表面に「す」が入ったり下手すると折れることがある。
居合刀の刀身にはミニカーや金属モデルガンと同じく亜鉛合金が使われている以上、常にこのリスクがある。しかし真鍮押出材ならこういった劣化は少ないため信頼性は高い。
柄
柄は茶色の牛革巻きにて仕立てられている。耐久性に優れ、見た目もカッコいいので好きな素材。黒もいいけどダークブラウンも深みがあって良き。
牛革は滑ると言われていて、どちらかというと見栄え重視の素材とされている。もし牛革を使う場合は裏側巻きにするか、擦り革(ヌバック)が用いられることが多いようだ。筆者はあまり気にならないのでこれで全く問題ナシ。むしろ正絹の方が滑って苦手だったりする。
目貫
目貫は馬二双図。ベースは真鍮製で、金メッキや赤銅メッキで色上げがされている。後述の鍔と揃いの意匠となっている。
鍔
鍔は桜馬の図。重さ140gと重めの鍔で、鉄製のため質感も良い。刀の重心が手前によりになるため扱いやすく爪を割る心配もない。個人的には居合用の刀は板鍔の方が扱いやすいと思う。
鍔は持ち込み品で、濃州堂製のものをオーダーにあたって組み込んでもらった。オーダーだとこういうことも可能なこともある(必ずできるとは言ってない)
ハバキや切羽は真鍮地に金メッキをなされたもので、真鍮地磨きに比べると一段明るく、赤みがあるため華やかな印象になる。耐食性の高さから電触効果も発生しないため、鉄鍔に優しい点も良い。
縁頭
縁頭は肥後桜の図。石目に桜の花をあしらったデザインで、縁取りと花は金着せ風(メッキ)となっている。これもハバキや鍔とあわせたデザインでお気に入り。
多少使っている刀なので金メッキが少し剥離してしまっているが、真鍮地なのであまり気にならない。
鞘
鞘は黒呂塗り。おそらくウレタン塗装だと思う。均質で美しい仕上げなのだが、光を反射するため傷がかなり目立つ仕上げでもある。居合で使っているとそのうちボコボコになってしまうので、気になる人は石目塗りにした方が良いだろう。
このメーカーの鞘は割と薄く作られていて、長さも刀身ピッタリなので気に入っていたのだが、受け技を出した時にうっかりヒビを入れてしまった。まだ新しくて1か月しか経っていなかったのでこれは非常に悲しい……。
風来のシレンの腕輪や、ベルサガの武器など、残り耐久にかかわらずランダム確率でアイテムがぶっ壊れるゲームがたまにあるが、この鞘もまさにそんな感じ。もしゲームだったらリセット案件すぎる。
仕方ないので武装商店さんにお願いしてスペア鞘を作ってもらったのだが、またぶっ壊れたらイヤなのでもったいなくて使えていない。そんなわけでこの剣はほぼ鑑賞&素振り専用になっている。
美濃坂本拵との比較
メイン武器の美濃坂本拵(下)とのショット。樋のあるなしもさることながら、メーカーが違うのでなかなか印象が異なる。
本刀(上)は引きで撮るとなかなかホンモノっぽい雰囲気があって好き。反りがやや大きく、元幅と先幅のギャップが大きいので体配が美しく見栄えがする。刀はやっぱりこの姿がいい。
入手方法
この刀は刀身が特殊仕様なので、オーダーメイドでないとおそらく入手できない。この刀は武装商店さんに誂えてもらった。現在もこの特殊規格の刀身を扱っているかはわからないが、十分な予算と納期未定であれば作ってくれる……かもしれない。お店に問い合わせ推奨。
なお刀身の種類についてはここで解説してくれる。この刀については「真鍮製幅広樋無し刀身」という特殊仕様なのだが、その特殊仕様でさらにイレギュラー品(なぜか通常体配になっている)なので、意図的に作ることはおそらく難しいと思われる。
もし作成が難しく、手っ取り早く真鍮刀身の居合刀が欲しいなら剣道型用の居合刀を入手する方法もある。これは剣道の型稽古で用いられる居合刀で、相対動作(刃合わせ)を前提としているため、靭性(粘り)を確保するために真鍮製刀身が用いられる。
刀と脇差の大小二振りのセットもある。意匠も同じなので統一感がある。
実は手元に一振りあるが重さは1190gとなかなか。ただしリアルさは微妙で、鍔元と切っ先が同じ太さ(共に約28mm)となり、樋堀りがないため鎬刀身となり、その用途上厚刃となる。居合用途の刀は別個用意した方がいいだろう。
まとめ
某SRPG風に性能評価
威力 | B | ランク | C |
精度 | B | 観賞価値 | A |
重量 | D | 強度 | D |
●新品じゃないけど壊れる心配はない |
この剣は威力と重量を兼ね備えていて、かつ精度Bと扱いやすいのが魅力。重さは1190gと居合刀としてはヘビー級でありながら先幅が小さく、刃渡りも二尺四寸と若干コンパクトなため、意外なほど抜きやすい。そして自重があるので振り下ろせばほぼブレない。
ただやはり重さがネックで、これを片手で振り切るのはそこそこのトレーニングが必要となる。慣れないと攻速落ちは免れないだろう。居合刀としては割とデブ剣の部類だが、本身の刀だとままある重さのため、あえてこれに慣れるという方法もある。
また強度Dがネック。鞘は薄手のため丁寧に扱わないとあっけなく割ってしまう。返し技のように体勢を変える技を行うときは刃や切っ先で鞘をこじってしまわないように注意。
総評
趣味全振りで作ってもらった刀で、革巻き柄、大乱れ刃、金メッキと派手派手要素を投入したためかなり気に入っている一振り。見た目ドストライクな上に重量感もズッシリくるので満足感が高い。
それでいて体配や重心バランスもいいためつい振ってみたくなる。しかし鞘を割ったことがあるトラウマから、居合用にはあまり用いておらず、観賞用、兼素振り用として触れることの多い一振りになる。
問題はスペア鞘がエリクサー状態になっていること。解禁するべきか超悩む。
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