ちょっとオンボロだけど使い勝手がいいカタナ。装備すると攻撃力が上がるぞ。
スペック
メーカー | 不明 | ハバキ | 真鍮(一部銀メッキ) |
全長 | 約mm ※実寸 | 柄長 | 八寸(約24cm) |
刃渡り | 二尺四寸(約72cm) | 柄巻 | 木綿・捻巻 |
元幅 | 約mm ※実寸 | 鍔 | 真鍮:春日(メッキ) |
先幅 | 約mm ※実寸 | 縁頭 | 桜肥後:真鍮色上 |
元重ね | 約mm ※実寸 | 目貫 | 軍配(真鍮) |
刃の形状・材質 | 亜鉛合金製・樋あり | 鞘 | |
刃紋 | 直刃 | 現行入手 | 不明 |
重量 | 約920g(鞘を払って) | 備考 | ※中古品 |
どんな刀?
これもオークションで入手した中古刀。「ええやん!」と思って落札して家に届いたら思いのほか消耗していてやっちまった感のある一品。ところが振ってみると無茶苦茶振りやすく、樋鳴りもしっかりするので実用品として割と重宝している一振り。
購入したもののメーカーがちょっとわからない。二色仕上げのハバキから日本アンティックギャラリー製じゃないかなぁと思っているがリアル世代ではないのでわからない。ただし縁頭・目貫などは日アギのパーツではないっぽいのでやっぱり違うのかもしれない。まあとりあえずは振りやすい。
ディティール
姿
ぱっと見普通の呂塗り鞘のカタナに見える。鞘にはコジリも付いていていい感じだが、一体どの辺がやっちまったのかというと……。
めっちゃ錆びてるんである。これはいただけない。
もともと購入時でそうだったんだが、どうも前主が組太刀稽古などハードユースしていたっぽく、メッキが剥離しているようだ。模擬刀は亜鉛合金にクロムメッキで仕上げられているのだが、クロムメッキゆえに錆びる。たぶん下地の銅メッキが錆びて緑青を吹いたんじゃないかなぁ。
購入時にショックを受けてとりあえず手直しをしたんであるが、実家を空けていて3年くらい放置して後、引っ張り出してみたらまたこの状態になっていたという。マジでガッサガサだったので逆に面白くて今回記事に挙げてしまった次第。
錆取り
そのままにはしておけなかったのでとりあえず錆取り。濡れたタオルでゴシゴシ拭ってみたが全く落ちない。メッキが剥げるためあまり使いたくはなかったが耐水ペーパーで錆落としをすることにした。
♯2000の細目のペーパーを水に濡らして擦って行ったところ、表面に付着した緑青は落とすことができた。必要以上にやると刃紋が消えてしまいメッキも落ちるので必要最小限だけ擦っていくことにする。
とりあえず錆びを落とした後の刀身。最低限刃物と呼べそうな肌にはなった。跡が残ってしまったのはまあしょうがないかな。
仕上げた直後はいいのだが、また数年経ってしまうときっと元通りになってしまう。キャロムショットのジルコニアコートを吹くかどうかちょっと悩む。アルミには効果があったのだが亜鉛合金だとちょっとわからない。
気を取り直して
気を取り直して全体の姿。引きで見ると傷が目立たず結構いい感じに見える。樋がハバキ元あたりまで入っているのがポイントかな。流し樋は真剣っぽく見えるので引き締まる。
柄
柄はオーソドックスな木綿・捻り巻き。黒っぽく見えるが実際は紺色となる。
刀の柄には化学繊維(ポリエステル)、純綿(コットン)、正絹(シルク)、牛革(カウレザー)、鹿革(ディアスキン)などが使われる。純綿と正絹は一見似ているが手触りと発色はまったく別物だ。同じ紺色、鉄紺、茶などでもまるで雰囲気が違う。
色物の柄で仕上げる場合、発色は正絹の方が段違いに良くなる。木綿製のネクタイをあまり見かけないのはつまりそういうことだ。刀の柄は正絹で仕立てると見栄えがするし格式も高いのだが、居合で実用すると正絹は滑りやすいので、実際には革や木綿の方使いやすいと思う。
正絹が使いやすく表革が滑るという人もいる。筆者はどうも逆で表革の方が滑りにくい。
目貫
目貫は軍配の図。真鍮製だが色がちょっと怪しい。亜鉛合金に真鍮メッキをかました安物かもしれない。模擬刀の金具は鉄・銀・銅・真鍮までは許せるが、亜鉛合金は許せない感じはある。
鍔
鍔は春日の図。 トゥースの人ではない 切羽が間に合わせなので上下で素材が違う…(汗)
春日地方(筑後の国:現福岡県春日市)の図柄らしい。このタイプは切羽台の小柄と笄(こうがい)の穴が同じ形なので組立の際に表裏間違えてしまっても目立たないので助かる(←筆者よくやる) この子は金色の唐草模様で鍔の裏表がわかるので尚良い。
一見カッコいいのだがバリが多く耳も立っているため意外とガッカリな鍔。ご丁寧にブラッククロムメッキで仕上げられているため仕上げ直しも難しい。真鍮地なのをいいことに鍔の外周だけ削って金覆輪にしようとも考えたのだが、戻せなくなるのでやめた。
模擬刀用の鍔であるため色々な拵えに流用可能で使い勝手はよい。切羽台の厚さは4mmと標準で、茎穴が大きいためそれなりに太い刀身にも対応できる、色々使い回した後、デザイン的に似合うという理由で今はこの刀に着けている。
縁頭
縁頭は桜肥後と呼ばれるもので、これも居合刀でそれなりによく見かける。金縁の部分と桜の模様はブラックニッケルメッキの上から普通に塗っているだけのようであまり出来が良くない。デザインは王道だけにちょっともったいない。
同じ桜肥後金具なら鬼神丸国重(オーダー)に付いているもの方が出来が良い。コチラは石目模様も質感が良く、桜の部分もちゃんとモールドが入っている。
なお鍔とデザインが同じ揃いの意匠に見えるがこれは後付けで、前述の通り別の鍔からコレに替えた。デザイン的には統一感があるため遠目にはまあまあカッコよく見える。
鞘
普通の呂塗り鞘でたぶんウレタン塗りと思われる。中古なのでそれなりに擦り傷や打ち傷はある。
特筆すべき点としてはまずは鯉口。この鯉口のところ縁だけが少し太くなっている仕上げはちょっと真剣っぽい雰囲気があってかっこいい。ここには補強材が入っている。もう一つはコジリ金具で、柄の縁頭と同じ意匠の桜肥後の金具が付いている。
コジリ金具が付いている鞘は高級品で、コレを付けると高いので筆者がオーダーで誂えてもらうときは基本的には付けない。しかし中古の模擬刀を買うと付いてくることがあり、かなり得した気分になる。
通常分解
中古の模擬刀なので分解は躊躇なく行える。むしろそれなりに消耗の目立つ刀なので各所点検は念入りに見ておきたい感あり。とはいえ数年前にばらした際に各所調整は済ませてあるので今回は弄るところは然程なし。
入手方法
メーカー不明なので何とも言えない(終了)
さすがにそれだけでは雑なので、仮に日本アンティックギャラリー製として説明する。このメーカーは既に解散しているため中古品としてしか入手することができない。ヤフオクやメルカリを根気よく当たる必要がある。
「日本アンティックギャラリー」「日アギ」「居合刀」とかで検索をかけると出てくる。重さとしては同田貫>>村正>>正宗といった感じ。ハバキに特徴があり、濃州堂のものとは異なる祐乗ハバキなど、現行品ではあまり見ないものが使われていることが多い。
縁頭も割と特徴があり、このメーカー独自のものが使われているため、名前がなくてもある程度判断することができるかもしれない。
まとめ
某SRPG風に性能評価
威力 | C | ランク | D |
精度 | A | 観賞価値 | D |
重量 | B | 強度 | C |
致命+12% ●傷んできている |
見た目こそボロいが振ってみると素晴らしい使い勝手を誇る刀。何はともあれ精度Aが素晴らしく、振っているとたまに会心の一撃が出る。見てくれはアレだが実際にはよく斬れるというのはちょっと妖刀イメージっぽくて好き。
重心バランスもさることながら、この刀の精度で特筆するべきは樋鳴りだ。樋彫りが深いのか、多少刃筋の悪い振り方をしても鳴ってくれるので上手くなったように錯覚する。生まれて初めて刀を握る人ですらこの刀なら樋鳴りを体験できるのではないだろうか。
ハードユースに用いたからか相応に消耗しているがバラした限りは問題なし。しかし刀身のダメージがそれなりにあるのかもしれない。小槌で打音を確かめてみたところ今はまだ大丈夫だが、この刀については折角なので折るつもりで使いこんでみたい気がしないでもない。
総評
第一印象は正直アレだったが、実は使いやすい良刀と気付き、愛用しているうちにお気に入りになってしまったカタナ。こういうことってあるよね。
ただしクロムメッキの錆がきになるところ。磨けば錆自体は取れるが、メッキが剥離するので防錆処理は必要になるだろう。ジルコニアコートをかけるのも手だが、中古の傷んだ模擬刀のためにそこまでするべきかどうか。いやだからこそ記事のネタにはなるのか…。うーんどうしよう。
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