【レビュー】美濃坂 同田貫拵(風来のシレン風)

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模擬刀

天下の名刀。どうたぬき源馬作。装備すると攻撃力が上がるぞ。

スペック

メーカー 美濃坂・同田貫拵 ハバキ 真鍮(ブラッククロムメッキ)
全長 約mm ※実寸 柄長 九寸(約27cm)
刃渡り 二尺四寸五分(約75cm) 柄巻 正絹・捻巻(鮫黒)
元幅 約mm ※実寸 鉄製:新型埋忠
先幅 約mm ※実寸 縁頭 鉄製:鉄地肥後(大型)
元重ね 約mm ※実寸 目貫 菱図(アルミ製)
刃の形状・材質 亜鉛合金製・樋あり 上黒石目
刃紋 濤乱刃 現行入手 可能(2024年現在)
重量 約1140g(鞘を払って) 備考 ※オーダー品

どんな刀?

神戸の武道具屋さんに拵えていただいた一振り。美濃坂製 同田貫拵がベースになっているが、諸々の仕様を別誂えに変更してもらったオーダーメイド品である。

美濃坂 同田貫拵は豪壮刀として業界では有名で、他の居合刀にくらべると一際身幅が広く、重ねが厚い。刃渡りと鍔にもよるが基本的には1100gを超えるので、ある程度慣れている人・体力がある人向けの剣といえる。


デザインはローグライクゲーム、風来のシレンに出てくる「どうたぬき」がモチーフで、初代シレン(SFC版)のどうたぬきを参考にして、いい感じに作ってもらった。

そんなミーハーな動機とは裏腹に、道中差しということで全体的には渋好みにデザインとなった一振り。刃紋は濤乱刃、柄は鉄紺の正絹巻き、鍔は埋忠風の鉄製鍛造鍔、縁頭は鉄製肥後、鞘塗は石目塗で仕立ててもらい、総じて武骨で実用本位に仕上がっている。

ディティール

姿

この刀は美濃坂 本拵と対にしたかったので、本拵と同じくあえて意匠性を廃している。鍔や縁頭はすべて鉄製だが、こちらはハバキや切羽、鮫革も黒色で揃えているので一見地味に見える。

しかしこのどうたぬき、実際にはめっちゃキャラが濃い。その特徴は以下の2つに集約される。

分厚い!!

刀身の厚さを「重ね」という。通常のカタナは8mm程度が標準であるが、この同田貫拵はひときわ重ねが分厚く10mmもある。元幅も34mmと幅広で、重量も1140gと他の刀とは比較にならない威圧感がある。

この威圧感は実際に振ってみるとさらに感じる。重ねが厚いため振ったときの空気抵抗が大きく、重量以上に制動力を使うのである。800g程度の並の居合刀とはまるで別世界であり、この刀を初めて振った人はおそらく満足に樋音すら出せないだろう。


確かに重い刀ではあるがとても振れないということはなく、少しトレーニングすればそこそこ扱えるようになる。そして振れ切ることさえできれば、その重さゆえに刃がぶれないために刃筋を立てやすく、一文字、袈裟斬り、振り下ろしのいずれも安定させやすい。

もっともそれはこの刀を満足に振るえる筋力があればの話であるが……。

長い!!

二尺五寸(75cm)とやや長い刀である。通常の模擬刀は二尺三寸五部(70cm)~二尺四寸(72cm)くらいのものが多いので、それよりもひとまわり、3~5cm長いことになる。

この3cmであるが、たかが3cmされど3cmだ。体格や腕の長さにもよるが、定寸(自分の体格にあった刀)よりも長い刀を使って居合を行うのは熟練を要する。

同田貫拵の場合、帽子(切っ先)が大きめであるため、数値以上のクリアランスが必要となる。普通の感覚で抜くと鞘に刃が触れて切ってしまうため、抜刀のストロークや鞘引きの具合を加減工夫する必要があり、なかなか難しい。

刀身

刃紋は「濤乱刃」でなかなか見ごたえのある。この刃紋は本身と異なり、型板を当ててグラインダーで荒らしてヘアラインを付けて再現するらしいが、この刀ではいわゆる二重刃紋という番手の違うグラインダーを2回当てて濃淡を付ける凝った方法がとられている。

刃紋は模擬刀メーカーごとに決まったパターンがあり、上記の濤乱刃はこのメーカーでは使われない方法やパターンであるが、業界や取次店によって横のつながりがあるらしく、職方へのやり取りにより純正品にはない仕様が可能な場合があるようだ。この刀の仕様もそれによる。

また刃の部分も「極薄刃」という仕上げがされており、ほぼ刃付け一歩手前まで薄くされている。この刀は模擬刀(亜鉛合金)なので切れないのではあるが、ここまで薄くされているとなかなか雰囲気が出るし、振ってみると本身ほどではないにせよ緊張感がある。


鍔元はこの刀の魅力だ。刀には軽量化や音鳴りを目的に「樋」という溝が峰側に彫られていることがあるのだが、この居合刀は本身(真剣)と同様、樋がハバキ下まで彫られており非常にかっこいい。

通常、非鉄金属で作られる模擬刀はハバキの下まで樋を彫り込むことをよしとしない。剛性に劣る亜鉛合金や真鍮では強度が足りないためだ。そのため通常の模擬刀では樋彫りをハバキの上で止めており、一目で模擬刀とわかってしまう。

この同田貫拵は刀身の幅の広さ、重ねの厚さで強度が確保できるため流し樋が可能で、メーカーとしてもこの仕様がデフォルトとなっている。機能としてはさほど関係ない部分であるが、ロマンという意味ではある意味超大事で、外せないポイントになる。

風来のシレン(SFC)のどうたぬきのグラフィックにならい、鉄紺の正絹糸諸捻り巻きにて仕上げている。鮫皮は実用本位ということで黒にしてみた。

正絹とはシルクのことで、刀の柄巻きでもっとも格式の高い素材とされている。そのため献上用や観賞用の刀はこの糸を用いて、摘み巻きという繊細な巻き方で仕立てられていることが多い。発色の良さは流石で、木綿は色の深みや艶がまったく異なる深みのある美しい色合いをしている。

……が、筆者は滑りやすくてあまり好みではなかったりする。ネクタイと同じ素材でバットやラケット、ゴルフクラブのグリップが巻かれているといえば伝わるだろうか。blueの先祖はたぶん百姓なので普通に木綿や革の方がよく馴染む。


柄は9寸(27cm)を指定して誂えてもらった。これは通常のものよりも3センチ程度大きい。帯を巻いて腰に差してみると数値よりも長く感じる。そして長さもさることながらこの刀は柄が太い。刀身がゴツイということは柄もゴツいのだ。

抜き始めのグリッピングの感覚が違うため、他の刀よりもしっかり握る必要がある。手の小さい人だと少し辛いかもしれない。


取り回しが悪い反面、握れる長さが多いので右手と左手を離して振ることができるため刀のリーチを伸ばせる利点がある。また居合には相手に斬りかかられた際に納刀したまま柄で突く、払う、押さえ込むなどの技があるが、これも長いため当てやすい。

長くて太い…一体何の話だろう(すっとぼけ)

目貫


目貫は菱というシンプルなもので、デザイン的に邪魔しないので使いやすい。ちなみに菱とは浮き草のヒシのことで、再生が早いことから活力と繁栄の象徴となったそうである。同じような理由でカタバミなんかもよく目貫や家紋などのモチーフとして用いられる。

素材はアルミだが、意外にも目貫に適した素材だと思う。亜鉛合金は劣化しやすいし、銅は緑青が吹く。真鍮地金にメッキを施したものは摩擦でメッキ部分が剥げてしまう。銀無垢は耐食性が高く理想的だが、何せお高い。

こうなるとアルミも意外と悪くないのではと思う。まあ江戸時代じゃアルミなんて当然存在しないんだけど、blueは「こまけぇことぁいいんだよ」の精神の持ち主なのでまったく気にならない。

切羽はハバキと同様ブラッククロムメッキ仕上げ。ハバキや切羽を黒くする場合、黒燻し液などで硫化変色させて黒くするのが一般的だが、黒燻しした切羽を鉄鍔に合わせるともらい錆びの原因になるため、鍔が錆びてしまいやすい。

その点メッキであれば硫化変色と異なり、もらい錆びは発生しないため鉄鍔でもさびにくい。被膜強度も黒燻しよりも圧倒的に強いため美観を長く楽しめる。こうした現代技術を積極的に使っていくスタイルは好き。

縁頭

縁頭とは柄の上下に挟む金具のことで、鍔側のものを「縁」、端側のものを「頭」という。素材は鍔と同じ鉄製で、角を落とした丸い造形は肥後と呼ばれる。

そんなわけで、この刀に使われている縁頭は鉄地肥後とというのだがこれは本拵に使われているのと同タイプのものだ。しかしどうたぬきの大きさに合わせて少し大型のものが使われており、縁で約42mm、頭で約38mmほどある。


本来はグリボリ図(泥棒の風呂敷みたいな渦巻き模様の意匠)の入った真鍮製の縁頭だったが、意匠性を消したいこと、鍔の素材と合わせたいことから、デフォルトのデザインより変えている。ちょっと上品になったかも。

やはり振った感じ、鉄製特有の剛性感を感じられる。ほんのわずかの違いだけど、何回も振っていると鉄製の縁頭のもの方がしっくり馴染む感覚がある。

鞘は上黒石目という塗りで通常の黒石目塗よりもグレードが高いもの。少し目が細かくきれいな仕上がりになっている。根拠はないけど多分ウレタン塗装だと思う。

当時の価格差で+11000円くらいだったので、この価格差で漆塗りはないんじゃないかなぁ。乾漆塗りはもう少し質感が違うし。もちろん居合刀としての実用性は申し分なし。


鯉口部分は本拵と仕様が異なる。銅製のリングが仕込まれており強度を向上させているようだ。

金属性ゆえ少し尖っており、抜きつけの際に左手を添えたときの指のアタリが気になったため、耐水ペーパーで縁を磨いて面取りを行ったのだが、その際に判明した仕様になる。通常この部分は黒く塗装されているので使い込んでみないとわからない。

ただしロットや製造時期によって仕様は異なるようで、通常のプラスチック製リングになっているものもあるようだ。

本拵との比較

美濃坂 本拵との比較。こちらは美濃坂としては中級グレードの居合刀となる。


同じメーカーなので作風は似ており、同田貫拵の方が力強い印象がある。あんまり変わらないようにも見えるが、実は重ね(刃の厚さ)が異なっており、振った時の樋鳴り音や空気抵抗がかなり違う。

後は配色かな。同田貫はかなり渋好みに作ったので雰囲気的にも重厚感が出ている。

同田貫とは?

同田貫とは九州肥後国に本拠地を構えた刀工の一門となる。著名な刀工は同田貫正国(または同田貫上野介)で、戦国時代の肥後国藩主・加藤清正の抱えとも伝えられる。

その作風は身幅と重ねが厚いゴリゴリの実戦刀で、鋭い切れ味というよりは重さと力で叩き割るといった向きの刀が多い。そんなわけで実物の刀は割と反りが浅めなことが多いとか。その一方で審美性や観賞価値はあまり考慮されておらず、とにかく実用品(戦闘用の刀)という性格が強い。

創作でのモチーフ

そんなわけで創作でのモチーフとしてもたびたび用いられる日本刀で、子連れ狼の拝一刀が差していたり(胴太貫)、風来のシレンのメイン武器だったり(どうたぬき)、刀剣乱舞で擬人化されていたりする(同田貫正国)。

すこしひねったものだと、ドラゴンクエスト5の「パパスのつるぎ」はこれがモチーフと思われる。あまりドラクエらしくないシンプルな剣で、パパス自体が拝一刀感あるしいいデザインだと思う。果てはゼルダの伝説にも出てくる(ダイゴロン刀)。

居合刀のモチーフとして

同田貫というワードは居合刀(模擬刀)業界では業界用語になっており、この商品名をうたう製品は大抵身幅と重ねが厚い豪壮刀であることが多い。メーカーによって様々だが抜き身の二尺四寸刀で950g~1000g程度あるようだ。

中でもこの美濃坂 同田貫拵は別格の存在で、重さ1150g程度と群を抜いて重い。そして重ねが分厚い。元幅で10mmもあり、それは刀というよりむしろ鉈や出刃包丁のような雰囲気すらある。

入手方法

現行品なので吊るしの刀で良ければ通販で入手可能。デフォルトの場合、柄は木綿黒、縁頭はグリボリ図、目貫は海老になることが多いようだ。デザインに特にこだわりが無ければ即納される。

一方で、拵えにこだわりのある人はこの刀のようにオーダーで作ってもらう方法もある。待てる人はこちらでやってもらってもいいだろう。オーダーは美濃坂製居合刀取扱店で申し込むことができ、上のスペック表のような感じで仕様を書くと大体その通りに作ってくれる。

まとめ

某SRPG風に性能評価

威力 B ランク B
精度 B 観賞価値 A
重量 C 強度 C
●新品じゃないけど壊れる心配はない

前に紹介した美濃坂本拵をひとまわり大型化させたような性能。いうならばオーバーカトラスといったところの武器。精度Bと扱いやすく刃筋をコントロールしやすく樋鳴りがしやすい。

音も重量級にふさわしい「ビュン!」という低い音で大剣ならではのロマンを味わえる。極薄刃仕上げのため雰囲気もリアルで、雑に納刀すると鞘にひっかかったり指で刃を触ると切れそうになるため、緊張感をもって稽古できる。

ただし刃渡りが二尺五寸(約75cm)とやや長くきちんと抜くには鞘引きを要する。重量Cとそこそこ重いため小柄な人や非力な人が振ると攻速落ちは免れず、下手すればバランスを崩してしまうだろう。その意味では少々の慣れを要する剣といえる。


観賞価値は好みをすべてぶっこんだので大満足。特に鍔元の掻き流し樋が素晴らしく、正絹で誂えられた柄巻きも質感高い。とても気に入っている一振りなのだが、なんだか使うのがもったいなくなってしまったので普段は別のどうたぬき(中古)を振っている。

せっかくいい剣を作ってもらっても結局安物や中古の剣ばっかり振っている気がする……。バイオやベルサガのプレイヤーは日常生活でも武器をケチるようになってしまう。これは考え物だ。


総評

力こそパワー!で地を往く刀それが「どうたぬき」である。

このどうたぬきを風来のシレン風に作ったところ、意外とマジメで渋い感じに仕上がった。筆者は居合人であるはるか以前より風来人であり、もはやシレンがきっかけという方が正しい。

どうたぬきの何が好きかって、「カタナ」という武器が既にあるところ、大して見た目が変わらない上に何の特殊効果もないこの武器を作ったことだ。スーファミの32MBしかないカセットでわざわざ一枠設けて、しかもシリーズ皆勤という。


この「攻撃力が2高いだけのカタナ」をわざわざ別の武器として登場させ、しかも「どうたぬき」などという一見聞きなれないネームを付けてしまうあたり、製作スタッフのセンスと強いこだわりを感じる。元ネタは言うまでもなく「子連れ狼」だろう。

こばみ谷ではこの「どうたぬき」が事実上の最強武器になるのだが、ローグライクゲームという性質上、序盤でいきなりこの「どうたぬき」を拾う可能性もあるわけで、とりわけ印象に残りやすい。序盤でゲットできたときに限ってあっけなくやられてしまうのだが。

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唐突に居合刀レビューがはじまったのは、その風来のシレンの新作がつい先月発売したからである。前作の風来のシレン5運命のフォーチュンタワーから実に14年ぶりの新作となる。なお初代シレン発売から数えると29年後、初代トルネコ発売の31年後となる。リアルヒンメル歴かな?

今作は「原点回帰」がテーマで、偽物道具や夜システムがなくなり、一律レベル1 HP15スタートになった。どうたぬきももちろん登場する。HPの回復がしやすい反面敵の攻撃力も高く、囲まれると落ちるバランスも初代リスペクトでイイゾーこれ。デッ怪はうん……まぁ……。


またUIは進化していて、モンスターの出現階層や能力値を見れるのもさることながら、罠対策の快適性が格段に増している。特に好きなのはドスコイ状態で、筆者は罠チェックの素振りはしたくない派なのでこれは超助かる。ニギライズは必要だが深層をテンポ良くプレイができるのは素晴らしい。

グラが殺風景でドット絵じゃないのは多少気になるが、シレン2、アスカ、トルネコ3あたりの経験者ならまあ問題ないだろう。そんなわけで筆者はプレイによりさっそく寝不足になっている。おかげでこのブログの執筆がまた遅くなってしまうのだった。体調に気を付けて毎秒更新しろ。

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