スペック
年代 | 2008年頃 | ムーブメント | 手巻き式 |
型番 | BB555 SV | 日差 | +30秒程度 |
直径 | 40mm | 風防 | サファイアガラス |
厚さ | 11.5mm | 防水 | 5気圧防水 |
ラグ幅 | 20mm | おすすめ度 | ★★★☆(3.5) |
機能 | トゥールビヨン、パワーリザーブ | 備考 | ビーバレル中期の作品 |
どんな時計?
ビーバレル中期の作品でトゥールビヨンの2代目となるモデル。デザイン的は先代BB333と同じブレゲタイプのギョーシェダイヤルで銀と黒の二種類が存在する。
先代BB333に比べると、パワーリザーブが新たに搭載されて機能性が向上した他、針がブルースチールとなり、またセンター配置となったことで美観が向上している。
トゥールビヨン
この時計の見どころは何と言っても6時位置に鎮座したトゥールビヨンである。スイス製の時計なら数百万円はくだらない超複雑機構を、中国驚異のメカニズムによって量産化を実現、20万円代での提供に成功している。
トゥールビヨンとは仏語で「渦」を意味する。かつて懐中時計で用いられた複雑機構である。
原理的には、時計が姿勢差(重力)の影響を受けて精度に影響で出るのを解決するために、テンプと脱進機を自ら回転させることで姿勢差を緩和するというものらしい。(blueは機械音痴なのであまり突っ込まないでほしい笑)
懐中時計と違い、腕時計は着用していると色々な向きや角度に変わるため、ぶっちゃけ意味ないと言えば意味のない機構である。・・・がその美しさから、現在はオープンハート(文字盤の一部をくりぬいてテンプが見えるようにしているデザイン)など意匠として取り入れられることが多い。
「渦」の名に違わず、その美しさは多くの時計ファンを引き込み、虜にして離さない。
ディティール
ダイヤル
実はダイヤルも結構手間がかかっている。ギョーシェの銀文字盤であるが、よくある艶消しの梨時仕上げではなくヘアライン仕上げとなっている。
この仕上げは安い時計に使われている例はあまり見られず、フレデリックコンスタントのマニュファクチュールでも初期型にしか使われていない。この仕上げで普通の手巻き時計も作ってくれたらきっと3個くらい買ってたかも。
またこの時計にはパワーリザーブが搭載されている。手巻き+パワーリザーブという組み合わせは普及価格帯の時計では珍しく、私はロイヤルオリエントくらいしか知らない。
手巻き時計はぜんまいを巻いた分だけメーター針が動いていき、巻かない限りはただ減っていくだけなので、パワーリザーブ表示は恩恵が大きい。日々のゼンマイ巻きが車のガソリン給油みたいな感覚になるのでとても楽しい。
針もブルースチールになっている。センター配置になったことで見やすくなった。ビーバレルにはトゥールビヨン搭載モデルは4種類程存在するが、どれも一長一短となっており決定版が存在しない。
しかし総合的にはこのBB555が一番バランスが取れているのではないかと思う。
コインエッジ
ケース側面はコインエッジになっている。ただし本家のブレゲをはじめとする雲上時計とは全く比較にならず、ただの溝という感じ。
またラグ部分もBB0038やBB0035などと同様に猫足(ティアドロップ)となっているが、これもフェイクでありバネ棒式となっている。価格なりというのが見えてしまう部分ではあるが、この時計のキモはここではないので手抜きはむしろ潔い。
シースルーバック
トゥールビヨンなので背面側からはテンプが見えない。ならではのちょっと珍しい光景。
中古のトゥールビヨン時計を買う時の注意点
ここまで褒めてきたが、ビーバレルをはじめオークションなどで度々見かける中古のトゥールビヨンを手放しでおすすめできるかというと・・・、正直おすすめはできない。
これまで散々持ち上げておいて最後に落とすのかよって思われるけど、一応それなりの理由がある。
メンテナンス費用が高額
腕時計は精密機械であり“生き物”である。ゆえに定期的なメンテナンスを必要とする。手にすれば価値が半永久的に継続する貴金属や宝石類とはそこが決定的に違う。ましてトゥールビヨンは超複雑時計であるのだから一際の技術力や手間がかかる。それはスイスだろうが中華だろうが関係ないのである。
それゆえオーバーホールを依頼するとかなり高額になることが予想される。昔ビーバレルの会社にOHの見積依頼してみたが、ちょっといい自転車が買えるくらいの額だったので断念した。
アフターサービスを終了した現在ではそもそもオーバーホールをやってくれるところを探すところから始まるわけで。
年代が古い
ビーバレルは既に中止されたブランドである。そのため多くの時計が製造から10年以上経過している。トゥールビヨンは上で述べた通り修理代が高額であるため、オクに出ているものはそのほとんどがノーメンテだろう。注油などもろくにされていないため、いつ部品が折れたり固着してもおかしくない。
もうひとつの理由として技術革新がある。トゥールビヨンは新しい方が状態がいいのはもちろん、そちらの方が安いのである。中華時計は宇宙世紀におけるグリプス戦役並のスピードで進歩しているため、トゥールビヨンも以前よりもかなり安いコストで作れるようになっている。
下手すると新品で10万円を切るものまである。以上の理由があるため、トゥールビヨンをお試しで1本欲しいなら素直に現行品を買った方がいいだろう。
しかしそれでも・・・
素晴らしい時計であることは間違えない。中華時計のロマンを知らしめた草分け的タイムピースであることは確かで、時代的な意義はあるし、個人的にも愛着がある。
ノーメンテはおすすめできないといいつつも、この時計も中古品であり、ノーメンテでまだ元気に動いている。いつか壊れて動かなくなるのかもしれないが、直すのかそのままにするのかはその時に決めたいし、そのどちらを選んでもきっと意義があるのだろう。
コメント