筆者自ら組み上げたとっておきの一振り。装備すると攻撃力が上がるぞ。
スペック
メーカー | 不明 | ハバキ | 真鍮(銀メッキ) |
全長 | 約mm ※実寸 | 柄長 | 八寸(約24cm) |
刃渡り | 二尺四寸(約72cm) | 柄巻 | 牛革・一貫巻(鮫黒) |
元幅 | 約mm ※実寸 | 鍔 | 竹図(ステンレス製) |
先幅 | 約mm ※実寸 | 縁頭 | 名称不明:肥後 |
元重ね | 約mm ※実寸 | 目貫 | 軍配(真鍮) |
刃の形状・材質 | 真鍮製・樋なし | 鞘 | 梨地塗 |
刃紋 | 直刃 | 現行入手 | |
重量 | 約1260g(鞘を払って) | 備考 | ※カスタム品 |
どんな刀?
中古の模擬刀をベースに鍔、切羽、鞘、下げ緒などをオークションで集めて組んで調整してリノベーションした一振り。筆者がバラバラの部品を組み合わせて作成したもので、実質的にはオーダー品に近い。
もともとジャンク相当品として売っていた中古品を格安で入手したのだが、何気に刀身とハバキが珍しいものを使っていたので、これ幸いと居合刀の汎用部品を集めて組んでみたところ、なんかカッコイイ感じに仕上がってしまった。
寄せ集めの結果できた産物なので特定のモチーフなどはない。「風来のシレン」で未識別の武器を片っ端から合成に壺に放り込んで出てきた刀はこんなイメージかと。
ディティール
姿
この剣だが、模擬刀としてはかなり仕様が珍しい。まず刀身だが、樋の入っていない真鍮製刀身なのでそれなりに重量がある。次にハバキだが銀メッキされた一重ハバキが付いている。これも珍しく通常品は「銀燻し仕上げ」のため黒っぽい。
また体配も珍しく、刀身の反りが浅いのに対して柄(茎)の反りがきつい。これは「腰反り」といって古刀に多くみられる形状だ。「反り腰」ではない(笑)それは病院に行くやつである。
また元幅と先幅の差が大きく切っ先が小さい(小切先)になっている刀を「ふんばり」といい、業界では「腰高く踏ん張りがきいた優美な~」とか言ったりする。一見呪文チックで難しそうだが要は「ヤサイマシマシニンニクアブラカラメ」と同じで、これ自体が様式(定型表現)になっている。
つまりどういうこと?
この模擬刀は古刀の形状なのだ。馬上で振るのに適した刀身形状であり、騎馬戦をやっていた鎌倉・室町時代では合理的形状と思われる。小切先は斬撃よりも刺突が多かったためだろう。つまり徒歩(正座)が前提となる居合道稽古用の模擬刀としては再現するメリットがない。だから珍しい。
このように反りが浅い模擬刀は珍しい。居合用に使いやすくするなら、柄(茎)の反りを浅くして、刃渡りを少し短くするといいかな。こうすると寛文新刀に近いディティールになる。
刀身
刃紋は直刃。シンプルな一方で飽きがこない。この刀は真鍮製の刀身なので素肌が特に綺麗なのだが、中古品として使われた小傷が付いているため、逆にそれがリアルで趣深い。
柄
柄は牛革の一貫巻き。ヤフオクで手直しされた刀がよくこの仕上げになっている。
筆者は一貫巻きがあまり好きではない。菱がないため手だまりがよくないのと、目貫の位置が違いしかも端が露出しているので掌に食い込んで痛いからだ。
ただいつもの捻巻きとは違った雰囲気があり、鮫黒の牛革巻きで仕上げると玄人感が出て凄みが出る。この剣についてはもともとこうなっており、解くのがもったいない程綺麗に巻いてあったのでこの仕様のまま生かしとなっている。
目貫
目貫は軍配の図。先に挙げた肥後桜拵えと同じデザインになるため模擬刀用の既製品となる。古美仕上げがされているので真鍮製だろう。
鍔
鍔は竹の意匠をした透かし鍔が付いている。これも別の刀から持ってきたもので、合わせてみたところドストライクで似合ったために使うことにした。なお調べたところこの鍔はステンレス製らしい。そのため細身でありながら粘りがあり強度はある。錆びる心配もなさそうだ。
そのまま茎に通すとガタが出てしまうためメモ帳を丸めたものを茎穴に詰めている。こんな適当でいいのかと思うが、実用上はこれで問題ない。合わせて切羽も銀メッキのものに替えている。
縁頭
柄は肥後と思われるが筆者が知らない図柄だ。よく見ると象嵌らしい模様が残っている。模擬刀では見かけないデザインで象嵌も珍しいため。もしかしたら時代物(アンティーク)かもしれない。
鞘
鞘はもともと付いていたものがボロボロだったのでヤフオクで汎用品を落札して替えている。梨地塗と呼ばれる仕上げで、果物の梨の表面のような見た目になる。なお中古品なので安い。
金,銀,錫などの梨地粉を蒔き,その上に透明漆を塗って粉の露出しない程度に研ぐ技法だが、これは模擬刀用なのでキャンディカラーの塗装かもしれない。透け塗には違いなく雰囲気はなかなかよい。
おそらく標準刀身用に規格された鞘であるためそのままだと刀身が入らない。なので鯉口部分をダイアモンドヤスリで削って調整している。ハバキが肉厚で意外と太く、飲み込みが悪かったので限界以上までガッツリ削っている。そのため強度は犠牲になっている。
下げ緒も鞘とは別についていたもので、かなり上等でしっかりした正絹でできている。長さが短いので短刀用かもしれない。色合いが鞘とマッチしているので合わせてみたところ雰囲気バッチリでガッツポーズしてしまった組み合わせ。
通常分解
通常分解したところ。真鍮刀身であるためクロムメッキのかかっていない茎部分が金色になっている。銀色のハバキがとても美しい。この綺麗な銀ハバキを見て拵えを改造しようと思った次第。
柄ガタ防止のため、茎の端の方はガムテープ(布テープ)を巻いている。本身の刀を使う人や職人さんからは怒られそうだが、筆者は文明の利器を積極的に活用するスタイルなのでこれで問題ない。他にもテグスやアルミホイル、瞬間接着剤、エポキシパテなどはよく使う。
…ふと思ったのだが、真鍮刀身にメッキをかけないで仕上げたら金色の刀身になるわけで、これで剛剣マンジカブラ作れないかな。クロムメッキに比べて表面強度も低いので傷が付きやすく、また保存状態が悪いと錆びるわけだけど、磨き直せるので意外と有りな仕様とも思う。
武装商店さん商品化お願いします(他力本願寺)
入手方法
筆者が材料を集めて組んだ拵えなので当然入手不可能。ただオーダー製の模擬刀ならかなり似た仕様で組めると思う。真鍮刀身を扱っているお店で製作し、金具を銀色でまとめ、柄巻きを黒革一貫巻き、鞘を梨地塗に指定すればほぼほぼ似た感じの刀が上がってくるだろう。
まとめ
某SRPG風に性能評価
威力 | B | ランク | C |
精度 | B | 観賞価値 | A |
重量 | D | 強度 | D |
●壊れる心配はない |
バラバラのパーツを寄せ集めて組んだ剣だが、柄と刀身はベースそのままなので精度は出ている。小切先のため抜きやすく、調整は結構追い込んだので普通に居合の稽古でも使える。ただし真鍮刀身のためちょっと重い。
鞘は梨地仕上げのため傷が目立ちやすく、鯉口をかなり無理して削っているので実用はちょっと厳しいかも。同田貫用の鞘を別で買ってくるのもありだが、そうすると多分ガバガバになってしまう。
そんなわけでこの剣も基本観賞用でたまに素振りをして楽しんでいる。自分で仕様を考えてパーツを集めて組んだ一品なので満足感は高い。重量1260gと相応に重いので振り応えもある。
総評
筆者自ら組み上げた刀で愛着のある一品。十数年前に模擬刀沼にどっぷりハマっているときに作成したブツであるためそれなりに気合が入っている。見た目的にインパクトがあり、真鍮刀身ゆえにズッシリ重いので眺めても振っても楽しめる。
模擬刀は稽古用のイミテーションにすぎず、経験者からはおもちゃと言われることもある。それはもっともなのだが、探すと意外とカスタムの幅が広くて楽しめる。なにせおもちゃなのでケガする心配も少なく、規格化されているため既製品で対応でき、価格もリーズナブルでお財布にも優しい。
筆者は刀を見るのも振るのも好きだが、模擬刀に関しては生活空間に普通に存在するためにカメラ、中華時計、トイガンと同じ光り物の1ジャンルという認識になってしまっている。身近すぎるためにかえって作法を知らず、これもDIYとかモデルガンのノリで触ってしまっている。
刀というのは真剣だろうと模擬刀だろうと本来神聖なものであり、敬意を持って接するべきなので、ちゃんとした人からすると怒られるかもしれない。そこはすみません。でも好きなんで許してください(なんでもしますからとは言ってない)
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