レッドウィングの靴その2.アイアンレンジャーではない。アイアンレンジなのだ。
どんなモデル?
レッドウィングのワークブーツ。鉱山労働者の履く靴をモチーフにしたらしい。2006年に発売したベックマンと同じくヴィンテージ路線のブーツで、このモデルは2008年発売とそれより少し新しい。
アッパーには通常のオイルドレザーよりもオイル含有量の多いプルアップレザーが使われている他、大型のキャップドトゥやクイックリリースできるフックなどを備え、よりワークテイストの強い一足に仕上がっている。
カラーは、ブラック、アンバーなどの基本色の他、ラフアウトレザー(いわゆる裏革)が使われているモデルがあり、それぞれ個性的な質感を楽しむことができる。
アイアンレンジ? アイアンレンジャー?
このモデルは日本法人の規格品で、当初「アイアンレンジ」として売られていたモデルである。しかしアイアンレンジと呼ばれていたのは日本モデルのみで、他の国では「アイアンレンジャー」と呼ばれていた。
理由としてはネーミングの響きで、鉱山戦隊アイアンレンジャーになってしまうのがイヤだったかららしい。これをダサいと思って危惧したレッドウィングジャパンが苦肉の策で「アイアンレンジ」(鉄の轍)にしたという話があるようだ。
日本国内と海外で名称が異なる例は割とよくあって、ホラーゲームのバイオハザード(BIO HAZARD)が商標問題回避のために、RESIDENT EVILに変えたみたいな話である。古くはドラクエ(DRAGON QUEST)も同じ理由でDRAGON WARRIORに変えたみたいな話がある。
アイアンレンジは商標問題ではなかったので、2018年に品番整理が行われた際に「アイアンレンジャー」に統一されることになった。この際に仕様がマイナーチェンジされるが、アンバーハーネスのモデルでいえば旧型番・新型番ともには8111となっている(実は少し複雑な経緯があるが割愛)。
仕様の違いとしてはソールで、旧型番の8111はニトリルコルクソールを搭載している。新型番の8081はビブラム#430ミニラグソールを搭載している。それ以外に大きな違いはないようだ。
ディティール
全体像





アイリッシュセッター(8875)とはまた趣向が異なるタイプのワークブーツとなっている。セッターがザ・アメカジといった感じのファッションアイコンの趣きが強いのに対して、こちらのアイアンレンジは古風で素朴な労働者のために靴といった感じで、なかなか男臭い雰囲気が漂う。




ラストは旧式ベックマンと同じ8番ラストが使われている。そのためベックマンと履いた時のサイジングは似ていて、サイドの履き皺の入り方も似ているかもしれない。
しかしキャップドトゥであることでヴァンプの履き皺の位置が変わったり、ハトメの上3つがフックになっているため、歩き心地や装着感は意外と違ってくる。
キャップドトゥ


アイアンレンジの最大の特徴となっているキャップドトゥ。鉱山労働者の安全靴としての機能になる。スチールトゥ(鉄芯)が普及する前のディティールで、アッパーを1枚重ねて縫うデザインになっている。
紳士靴でいうキャップトゥとかストレートチップ(和製英語)と同じものだが、この靴の場合、使われている革が厚いのと、===のステッチが2本入るので結構な存在感がある。
このキャップトゥがあることでヴァンプの手前側の履き皺が深くなっている。この靴は当時サイズ感が良く分かっていなかったためオーバーサイズで履いており、シューツリーも使っていなかったので尚更深くなっている。
アイレット

アイレットは7つ。下4つがハトメ、上3つがフックとなっている。個人的にフックは裾に筆禍あってしまうのであまり好きではない。‥‥がこの靴の場合はフックの方が雰囲気的に合ってると思う。
ソール


ソールはレッドウィング純正のもので、ニトリルコルクソールになっている。これは耐油性に優れたゴム素材にコルク欠を混ぜて軽量化とグリップ力を高めたもの‥‥らしい。ベックマン程ガシ履きはしていないのでそこそこ残っている。
このソールなのだが、ゴム製なのでレザーソールより耐水性には優れている。雨でも染みてくることはない。ただトレッドがほとんどないのでゴムソールとしては割と滑る。
このブーツをカスタムするなら、ビブラムラグソールとかコマンドソールなどが似合いそうだが、このソール特有の色味も捨て難く、なかなか悩ましい。
履き心地

旧型ベックマンと同じく8番ラストが使われていて履いた感じは似ている。Dワイズで割と狭いらしいが、この靴はオーバーサイズを履いているのでイマイチわかりにくい。
前述の通りベックマンとはキャップトゥであること、アイレットの上3つがフックであること、バックステイの高さがあることなどで異なっているため、歩き心地や着用感は微妙に異なってくる。ヴァンプの履き皺の分、甲の部分はこちらの方がタイトかもしれない。
入手方法
現行品のためリアル・ネット問わず入手可能。現在はニトリルコルクソールではなくビブラムミニラグソールが搭載されたものになっており、若干グリップ力が向上している。
メンテナンス
この靴に関しては、当初ジュエルのブーツオイルで仕上げていた。オイルには蜜蝋(パラフィン)などは含まれていないため、素朴な仕上がりになる。
ただプルアップレザーゆえにちょっとした擦れ傷などが入りやすく、気を遣うのが面倒くさくなってしまったため、結局いつも通りモゥブレイのニュートラルで磨いてしまっている。顔料による補色は行っていないため、素地の質感がそのまま生かされる姿となった。
一方でブラウンやブラックで補色を行うと色味がグッと締まって渋い風合いになる。Webサイトやオークションで見ると結構振り幅が大きいので面白い靴かもしれない。
まとめ

炭鉱労働者の靴がモチーフということでオールドかつワークテイストの強い一足。補色をせずにメンテしながら使っていたところ、素朴すぎてなんか苦手なブーツになってしまい、ベックマンに比べて出番が少なめになってしまった。ソールが比較的残っているのもそんな理由。
なんかこう犬っぽくないですか?あの感じがチョット苦手で‥‥。
履き込み例を見ると、アンバーハーネスはダークブラウンやブラックで補色していくと割と渋い感じに仕上がるそうで、そっちの方が合わせやすいのかと今更ながら思ったり。とはいえこの風合いも割と唯一無二っぽい雰囲気なのでどうにも扱いに困ってしまった靴。
いっそ色を塗り込みながらガシガシ履き込んで、ビブラムラグソールに換装するまで行った方がイメチェンになるのかな。この靴って購入当初は結構色が濃かったんですよ。

ベックマンとのツーショット。同じ8番ラストの使われている事実上の兄弟モデルだが、見比べてみるとアイアンレンジの方がワーク感が強いのが改めて分かる。またアイアンレンジの方が若干シャフトが高い。
ちなみに筆者が初めて履いたブーツはやはりレッドウィングのアイリッシュセッター(8875)で、当時大学生の頃に履いていた。23番ラストかつモックトゥゆえにウィズが若干きつかったのと、オロラセットのアメカジ臭が合わずに売ってしまったが、あの靴も思い出深い。
ついでにレッドウィングにはブラックスミスというベックマンとアイアンレンジの中間みたいなモデルもあるのだが、これも8番ラストが使われている。ファンはどれを選ぶか悩むところだ。
う~ん。筆者はちょっと置き場所がないからなぁー。
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