【レビュー】LAOWA 12mm F2.8 Zero-D ③超広角レンズの世界

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ニコン

前回、K-3IIIで試してみたラオワ12mm F2.8だが、今回はフルサイズ機にて撮影してみた。焦点距離12mmという未知のゾーンを体感する。

ニコンZ7に装着

K&F Conceptのマウントアダプターを介してニコンZ7に装着。PENTAX FA31mm F1.8を装着したときのようにハーフシルバーになる。少々太めのレンズだがZマウントのマウント直径とほぼ同寸のため、意外にもサマになっている。

平沼陸橋

まずは京浜急行戸部駅のカット。この時点で12mmという超広角画角の異様さが見て取れる。ほぼ真下から撮っているにもかかわらず随分手前から撮ったように見える。このレンズで看板を寄って撮ろうものなら、いつの間にか通り過ぎてしまうのだ。

そこから横浜方面に向かって歩いた平沼陸橋からのカット。通常画角ならばトワイライトになる絵が、このレンズだと四隅は真っ暗になってしまう。周辺減光の影響も確かにあるものの、それを差し引いても画角の広さがよくわかる。

横浜駅周辺

平沼陸橋の横浜駅方面。しばしば高感度テストで用いている場所になるが、駅ビル(ジョイナス)の文字が読み取れないほどの視野角の広さになる。

また焦点距離が短い=シャッタースピードを落とせる ということでもあり、1/5秒のようなそこそこのスローシャッターも容易で、画面右側の横須賀線も残像になっている。


横浜駅西口と、イオンモール前(旧ダイエーのあった場所)。いずれも見慣れた風景であるものの、このような超広角レンズで撮るとまた違った印象になる。


鶴屋町公園

今回の目的地で好きなスポット。横浜駅の西口から岡田屋モアーズの通りを歩いて橋を渡り、浜虎(ラーメン屋)の通りを歩いて環状一号線1号線の交差点を直進したところにある。

この公園は四方をマンションで囲まれておりちょっとした九龍城気分を味わえる。すぐ近くがラブホテルなこともあってFF7の6番街スラムのような雰囲気があり一見ディストピアっぽく見える。しかし実態はむしろ逆で、とても由緒のある場所なのだ。


この鶴屋町や台町のあたりはかつて宿場町(東海道神奈川宿)があったところで、歌川広重の浮世絵では横浜駅方面一帯は海だった様子が描かれている。近傍の料亭「割烹 田中屋」の建物はその当時の浮世絵にバッチリ描かれている。なおこのとき横浜駅一体はだった。

正面のマンションに土台となっている石垣はブラフ積と呼ばれるもの。長手と小口を交互に並べていく独特の模様が特徴で、レンガのフランス積に相当する。横浜では山手などでよく見られる石垣で、文明開化の面影をわずかに感じさせる。


煽り構図で撮っているが、この通り12mmという超広角レンズにもかかわらずタル型の歪曲収差がほとんどない。この圧倒的なパースによる圧迫感はなかなか。

超広角域で歪曲収差を補正すると、四隅に行くほど像が引っ張られるため実際よりも長く見える。要はメルカトル図法の地図でグリーンランドが超デッカク見えてしまう理屈と同じなのだが、ここまで来るともはや特殊撮影の域で、肉眼をはるかに超える視野角ともなるとなんだか脳がバグってくる。

また超広角レンズゆえ逆光には弱いようだ。これはまぁ仕方ないかな。ニコンの神レンズ(AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8)が優秀過ぎた。Zマウント版はもっとスゴイらしい…。

高島山トンネル

高島山トンネルは鶴屋町と反町を繋ぐトンネルで、みなとみらい線直通化以前の東急東横線(旧桜木町線)反町駅~横浜駅間の鉄道用トンネルを、横浜市が用地ごと取得して再整備したトンネルになる。

左側の写真は、四隅のうち左下と右下部分が四隅に引っ張られており、パースペクティブの強さがわかる。前を歩いている人も割と近くを歩いているはずがなんだかE.Tみたいになってしまった。

なおこのトンネルは生活路としてかなり有用なのだが時間制限があり、朝6:00~夜21:30しか通り抜けることができない。朝はともかく夜が早いので、このあたりの住む人は21:30ダッシュが半ば常識になっている。残業してしまうと家路が遠くなる(物理)

青木橋

横浜における交通の要衝。渡しているのは川ではなく線路でそのため跨線橋となるのだが、京急線、JR京浜東北線、JR東海道線 JR横須賀線と4路線も渡しているため非常に賑やかで、品川駅の八ツ山橋同様とても見ごたえがある。

横浜駅を出てしばらくはJRと京急が並走を行う区間があり、日夜JR東vs京急のバトルが繰り広げられているのだが、横浜駅はホームの長さや位置が路線によって異なるためこの橋が事実上のスタートラインになっている。なおバトルは基本的に京急が勝つことが多い。


この道の右手には第一京浜(国道15号線)左手には第二京浜(国道1号線)を控えている。交差点の上には生麦事件でも知られる本覚寺がある。このお寺には当時アメリカ大使館が置かれていて、薩摩隼人(ぼっけもん)から誤チェストされたイギリス人が命からがら逃げ込んだ寺院として有名。

当時この寺院にて治療にあたった医師こそが、日本にローマ字を普及させたことで有名なジェームス・カーティス・ヘボン氏である。同氏は明治学院大学を創立したことでも知られており、上記第二京浜を五反田過ぎまでひたすら直進すると白金キャンパスがある。

この白金キャンパスは冬季は庭がライトアップされていて綺麗で、すぐ近くにはシロガネーゼの巣窟である白金台や、東京タワーをベストポジションで撮れる桜田通りなど夜景撮影向きのスポットが多くある。


なお橋の右手にはショボいことで有名な京急線 神奈川駅がある。有名な理由がひどい(笑)

県庁所在地の名を関する割にショボすぎることでネタにされる本駅だが、駅舎は神奈川宿リスペクトで結構好き。ただしホームの幅が狭くドアついていない中、横浜駅でダァ シエリイェスした快特が超スピードで駆け抜けていくのでちょっと怖い。

ポートサイド地区

そのまま金港町方面に進むとポートサイド地区に出る。左側はポートサイド中央交差点、右側は高島中央公園という場所で、前回もこのレンズで撮った場所となる。

しかし前回はAPS-C機のため換算18mmとまだ常識的な画角だったのに対して、こちらはフルサイズ機で撮っているため本来の12mm画角となるため、猶更画角が広くパースもきつくなる。


新高島駅周辺

新高島周辺のビル群は冬季にイルミネーションを行っている。この写真は少し前に撮ったもので3月現在は終わってしまっているが、2月下旬まではやっていたので結構長い間楽しめる。

ちなみにこのレンズは最近の超広角レンズ同様かなり寄れる。最短撮影距離で18cm、最大撮影倍率0.2倍なので、ガッツリ寄ってパースを超強調した写真も撮れるかもしれない。


下から煽って撮ってみた図。京都の竹林とかこうやって撮るといいかもしれない。

しかしこの構図で撮るとほぼ至近距離まで近づいて撮ることになる。超広角レンズでの「寄れる」「寄らなきゃ撮れない」ということでもある。12mmともなると一苦労だ。

まとめ

このレンズはMFレンズ故にマウントアダプターを用いて使い回すことができるので、フルサイズ機とAPS-C機とで性格・用途の異なるレンズとして使い分けることも可能。それぞれのカメラを持って行けば疑似的なズームレンズとしても運用できる。一粒で二度おいしい。

フルサイズ機で使えば本来の12mm画角での圧倒的な視野の広さと強烈なパースを体感できるが、ピーキーで特殊撮影の域になる。また絞り解放のF2.8は四隅の描写が甘くなり、周辺減光もかなりある。超広角ゆえにシャッタースピードは稼げるので気になるなら絞った方が良い。


一方のAPS-C機で使った際の換算18mm画角は、まだ常識的な画角になるので自然な描写で、周辺減光の影響や四隅の甘さもなく安定した画質で使いやすい。そして超広角画角である点、単焦点ゆえにそこそこコンパクトな点から、APS-C用レンズとして使っても損な感じは全くない。

逆光耐性の弱さ、ボケの固さなど弱点もなくはない。電子接点がなく、F値も一段刻みになっていることなど不便さもあるが、割と唯一無二な個性派レンズといえる。価格もサムヤンよりも高いが質感は高く所有欲を満たすもので、そして使い回せるのでコストパフォーマンスは意外と悪くない。

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