【レビュー】Nikon NIKKOR Z 24-70mm f4 S

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ニコン

Z7付属のキットレンズだと軽く見ていたら実はすごいレンズだった。キットレンズの先入観を覆す描写性能を持つすごいレンズ。

Nikon NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

スペック

焦点距離 24-70mm レンズ構成 11群14枚
最小絞り F2.8 絞り羽根枚数 7枚(円形絞り)
最大絞り F22 寸法 77.5mm × 88.5mm
最短撮影距離 30cm(撮影倍率0.3倍) 重量 500g
フォーマット フルサイズ フィルター径 72mm

 

キットレンズなんて…

先に書いた通り、このレンズはZ7のキットレンズとしてついてきたものである。キットレンズとは、カメラ本体とセット売りになっているレンズのことで、ゲームでいう初期装備品に近い。まずはこのレンズで撮影に慣れてもらって、やがて要求や必要に応じて別のレンズに移っていくのである。

そのためキットレンズは安価である(≒性能が控えめ)であることが多く、慣れた人はあえてキットレンズを購入しないことも多い。blueもその認識でいて、FTZ(マウントアダプタ)で手持ちのFマウントレンズを流用したり、TTArtisanのような中華レンズで遊んだりすることが多かった。

このブログに出てくるZ7はカーチャンの所有物で、私自身は未だにD800やらK-3やらを使っていることもあり、ローンチのキットレンズなんて…と、このレンズの存在に気付かずスルーしていたのだが、意外な事実が発覚する。

F4通し…だと?

そう。このレンズはローンチのキットレンズでありながらも絞り開放値がF4通し、いわゆる小三元レンズの一角なのである。メーカーもユーザーもその認識は一致しているので滅多なものは出さないはず。

早速ニコンのHPでスペックを確認すると、まずMTF曲線の良さにビビる。F4スタートとはいえ、Fマウントの24-70 F2.8Gよりも数値上のスペックが高い。特にワイド側はほとんど落ちない。これは解放絞りからすでに周辺まで解像度が高いことを意味する。

レンズ構成図では、EDレンズ×1、ED非球面レンズ×1、非球面レンズ×3と特殊レンズが5枚も使われており、しかもナノクリスタルコートあり。あっ、これすごいやつだ…。

Zマウント

そもそも一眼レフカメラから光学ファインダーやレフレックスがオミットされ、ミラーレスに移行した理由はなんだったのだろうか。本体の小型化やデザイン上の理由も確かにあるだろう。

しかしミラーレス機になった恩恵は本体側もさることながら、それ以上にレンズ側が大きい。Fマウントは内径44mm・フランジバック46.5mmに対して、Zマウントは内径55mm・フランジバック16mmと大口径化したため、光学設計において絶対的に有利だ。

名前がドラゴンボールのZ戦士を連想してしまってなんだか笑ってしまうが、だいたいあってる。60年以上の歴史を持つ伝統のFマウントをかなぐり捨ててまで移行した新時代マウントのポテンシャルは、このレンズにもしっかり反映されている。

Z7に装着

カメラに取り付けるとこんな感じ。マウント元からレンズ先端まで太さが変わらず寸胴体系で茶筒感があり、沈胴式なので撮影時はレンズ先端が延びるためぶっちゃけカッコよさは微妙。ただし鏡胴はFマウント時代のレンズに比べて細めで、ズームリングやMFはしやすい。

このレンズはS-Lineに区分され、ナノクリスタルコートもなされた名実共に高級レンズのカテゴリなのだが、デザインがシンプルすぎてオーラがないと思う。タムロンやシグマと見分けがつかないばかりか、あまりにも存在感がなさすぎて今日まで埋もれる結果になった。

機能上は問題ないものの、デザインとして少し工夫が欲しいところ。金属鏡胴採用で質感は悪くないのだしもう少し主張してもよいのでは。

D800との比較

レンズがタムロンのものとうり二つで見分けがつかない(笑) ズームの向きまで一緒という。

見た目はやっぱりD800の方が好みかな。Z7のデザインは正直今一つだと思う。ミラーレス機は直線主体のデザインの方がなじみやすく、これはソニーや富士フイルムの方がうまい。あくまでもエルゴノミクス路線ならキヤノンだろう。両社に比べるとイマイチ中途半端感が否めない。


ただし、使ってみるとグリップ形状や各種ボタン位置が最適化されていることがわかるし、デザインの垢抜けなさはZマウントの大きさによるものなので、機能性に振ったことが理由と思われる。DX機のZ50やZfmはちゃんとかっこいいので、Z7のダサさはある種確信犯的なところがあるかもしれない。

あと、ボタンの押し心地はD800同様上質で、EVFも非常に見やすい。ニコンはどうも江戸っ子気質で、使用感とか防塵防滴とか頑丈さとか、こういう外見やカタログスペックではわからない部分にこだわるので、ここはもっとアピールしてもいいと思う。

そんなもんあたりまえすぎてアピールにもなんねぇわとか考えてそうなのがニコンらしいというか。

入手方法(2023.5)

Zマウントのレンズなので家電量販店で普通に売っている。もちろんAmazon、楽天、Yahoo!でも入手可能。ただし5月下旬を持ってニコン製品は10%程度値上げとなってしまった。オープン価格なので仕方ない。

中古という方法もある。後述するが、このレンズはスペック上の上位互換がいるので中古の玉数は多く比較的こなれた価格になりやすいため、お買い得レンズとなる。

このレンズで撮った写真

前置きが長くなったが作例を。海岸通りから大桟橋をぶらぶらと。レンズ1本撮りで回ろうとすると結局土地勘がある横浜に来てしまう。そして行けば何かしらあるので撮れ高も何とかなるという。

海岸通り

さすがナノクリレンズ。1枚目2枚目のヌケの良さはなかなか。




このレンズはF4スタートなので夜景撮影には不向きに思えたが、ISO3200くらいまでは使える上、ボディ内手振れ補正が効いているので思ったよりも撮れてしまう。繁華街なら十分撮れる。

必然的に開放絞り(F4)での撮影となるが、MTF曲線が示す通りシャープで解像感は高く、とてもキットレンズとは思えない写りをする。一方で遠近のある風景や被写体を撮るとさすがにボケは小さくなる。しかしこれは50mm F1.8S などの単焦点レンズと使い分ければいい話である。


遠景の夜景はこんな感じ。1/30、F4、ISO1600くらいで撮ったが、1/20、F4、ISO4000くらいまで上げられるのでまだ余裕はある。

大桟橋

超久々に三脚撮影を行った。カメラやレンズの性能が上がってスナップで撮れるようになったので出番が減ってしまったが、すぐ上のスナップで撮ったカットと比べると違いは一目瞭然で、このような夜景写真は三脚がないと撮れない。

日曜日だったので明かりが少なく、雲も出ていてコンディションはあまりよくないが、レンズの性能がいいせいかクリアに見える。「暗いが画質のいいズームレンズ」は三脚撮影にはもってこいで、24-70mmは3倍程度のズーム倍率があるので足が使えない定点撮影でも柔軟に対応できる。

またミラーレス機ならではの長所として、長時間撮影時におけるミラーショックが起こらない。これはすごくいい。シャッターボタンを押した瞬間は無音なので戸惑うが、ブレがない為リテイクの数は減って作業が大きく捗った。

まとめ

すごいよく映るキットレンズという感じ。わざわざ不利な夜景撮影にもっていてこれなので、昼間の撮影ならこれ1本でほぼほぼこなせてしまうのでは。最短撮影距離が30cmとそこそこ寄れるのもポイント。これはFマウント時代の24-70 F2.8よりも優れている。

ミラーレス機は現状ソニーの先行逃げ状態にあるが、ニコン・キヤノンは後発である分マウント径にアドバンテージがあり、レンズ設計で追い込みをかける形になると思われる。下火といわれるデジカメ界隈だが、ミラーレスも脂が乗ってきた感がある。2023年も面白くなりそうだ。

追記:上位互換レンズの存在

このレンズを語る上で避けて通れない話として上位互換レンズの存在がある。キットレンズであるが故上位互換が存在するのだ。

NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

基本スペックそのままにズーム側が120mmまで伸びたタイプ。単純にカバーできる焦点距離が伸びたためこちらの方が守備範囲が広い。全長118mm(3cm増)・重さ630g(130g増)だが、この程度ならほぼデメリットは感じない。実際多くのユーザーが乗り換えているという話も。


NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

こちらは焦点距離そのままに絞りが1段明るくなったタイプ。もちろん開放からキレキレ。

従来のナノクリコートに加えてアルネオコートという新開発コーティングが採用されており、超絶画質を堪能できる。全長126mm(4cm弱増)・重さ805g(305g増)と小さくはないが、それでも先代の24-70mm F2.8G(Fマウント)よりは小さい。

追記:「キットレンズ」の強み

じゃあこの子はいらない子なのかというと、そんなことはまったくない。むしろキットレンズとしての強みが活きる。

まずこの子は中古品の玉数が相当多い。Zマウント黎明期のレンズでありキックバックキャンペーンもやっていたので、中古価格がこなれており4万円程度から買えてしまう。従来24-70mmを使っていて、120mmは別のレンズで撮るわという人はこのズームで全然足りる。

また最短撮影距離が30cm(最大撮影倍率0.3倍)という点は何気に後発の2本よりも優れている。小さくて軽いことも含めるとかなり取り回しやすい。単焦点やマクロを使い分ける人はこのレンズで全然いけるし、Zマウント最初の1本はとりあえずこれ買っとけば問題ないレベル。

おまけ

タムロンマクロ 90mm F2.8(272E)で撮った一枚。いつも物撮りに使っているレンズだがもちろん外でも使える。70mmでは届かないが90mmなら届くという場面はままある。

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