伏線回収回。鶴岡の「外側」には何があるのか?
鶴岡の「外側」
鶴岡市は東北地方で総面積が最も広い基礎自治体である。しかしもともと鶴岡は城下町でありここまで広域を表す地名ではなかったはずだ。事実、昔はここまで大きな市ではなかった。このマップでいうと緑色のエリアが「鶴岡」だ。
これには訳があり、時は世紀末・1999年までさかのぼる。国は市町村の財政基盤の強化を目論み、地方分権一括法による合併特例法が改正された。この改正により地方交付税が削減されることとなるのだが、その一方で合併を推進した自治体には合併特例債を中心とした手厚い財政支援を受けられた。
いわゆるアメとムチの政策なのだが、この合併特例債等の特例が2005年(平成17年)までに合併手続きを完了した場合に限られたため自治体の駆け込み合併が相次いだ。世に言う「平成の大合併」というやつだ。
旧温海町方面
この平成の大合併により、近隣自治体の藤島町、羽黒町、櫛引町、朝日村、温海町が鶴岡市に編入・合併されることとなった。山形県はシューティングゲームの「グラディウス」に出てくるモアイみたいな形状をしているのだが、鶴岡市はこのモアイの「鼻」にあたる。
しかし元の鶴岡市は譜代大名の酒井氏が治める城下町だったため、その範囲は鶴ヶ丘城(現鶴岡公園)を中心とした一帯にとどまり、平成の大合併前の鶴岡市の市域はここまで広くはない。羽黒、温海は有名だが鶴岡市街地からは外れた場所にある。
鶴岡の「外側」とはまた失礼な話だが、実際のところ鶴岡市街の住民の生活圏からも外れる場所になっているため、意識して訪れない限りなかなか来ない場所なのではないかと思う。筆者は生まれこそ鶴岡市であるものの、ネイティブではないため尚更だ。
特に旧温海町方面は今までは家族で訪れていたため、思うように探索できていない場所だったのだが、今回は有給使って前乗りしているので自由に探索ができる。そんなわけで、今まで気になっていた部分を回収していく回になる。
撮影機材
サブカメラのK-3IIIにSMC Pentax DA 35mm F2.8 Macroで撮っている。三瀬の山肌の部分だけ入りきらなかったのでLaowa 12mm F2.8で撮っている。
このカメラで撮った写真
由良町
由良町は加茂から日本海側をやや南下したところにある港町だ。ここもやはり漁港で海水浴場があり、夏場は賑わう場所になっている。
白山島がシンボルで「東北の江の島」の異名がある。湯田川温泉の「藤沢」もそうだが、妙なところで神奈川と繋がりが多い。オリジナルの江の島は稲村ケ崎から臨むとちょうど西を向くため夕焼けが美しいが、こちらの白山島やはり夕焼けが楽しめる。
この辺りの夜も静かだが、ナトリウムランプがあるため星景撮影はあまり望めない。温海方面まで移動するか、後述の三瀬地区にある八森山がおすすめだ。
夜の様子はコチラ。去年ここに三脚を忘れてしまい慌てて取りに戻ったことがある(一敗)
五十川(いらがわ)
あつみ温泉駅と鶴岡駅の間にある駅で、「いなほ」に乗っているとスルーしてしまう駅になる。今回は最後の里帰りということで「一体何があるんだろう」と降りてみた次第。例によって無人駅になっていて、ホームへは地下道を通って移動する。
五十川のシンボルとなっている古四王神社とそれに至る橋。欄干は朱塗りでなかなかカッコイイ。擬宝珠は以前は金着せだったものが現在は地が青銅が出ている。これも時の流れと風情を感じてよい。
この五十川の集落はよくある日本海沿岸の集落といった様相だ。きっと冬は雪深くなるのだろう。
このあたりの地名にもなっている五十川(いらがわ)。今も昔も変わらない日本海の原風景だ。とめどなく流れるせせらぎが心地よい。
すぐ近くには日本海東北自動車道のいらがわICがあり、さらに奥に進むと能・歌舞伎で有名な山五十川があり、さらに奥に進むと山五十川の玉杉がある。この玉杉は「これ半分トトロ住んでるだろ」と思わんばかりの巨大な杉の木で、その樹齢は1500年にも達するらしい。
世の中には巨木マニアという人種もいるそうで、その筋の方がよく会いに来るそうだ。今回は来られなかったが、いずれ訪れてみたい。
三瀬海岸
五十川から少し戻って三瀬へ。このあたりから暗くなってきているため巻きで撮っている。
このあたりは三瀬海水浴場でそびえたつ大岩がトレードマークとなっている。去年この近くの立岩を取りに行ったが、日本海沿岸独特の険しい地形はとても荒々しく、また美しい。
レンズをラオワ12mmに替えて引きで撮ったところ。あいにく曇っているのが残念だ。しかしスケール感は伝わるのではないかと思う。
このあたりの海岸線はものすごく険しい。標準レンズでは入りきらないため、超広角レンズに交換していて撮っている。こういった地形は関東地方にはないものだ。
改修された擁壁いくつかあるが、実際にこのあたりは大雨により大小何度かの土砂崩れが何度か起こっている。冬は日本海から吹雪が吹き付けるため自然環境がかなり過酷な場所だ。この国道7号線や国道112号線は天候が荒れるとしばしば通行止めになる。
ちょうどタイムリーな話で、この記事を書いている際に遊佐町に線状降水帯が発生し、大雨特別警報が発令された。工事中の高速自動車道に大穴が空いたという報告もある。このように実際に過酷な場所なのだが、厳しい地形が黙示のうちにそれを物語る。
擁壁を縫うように集落と旅館がある。この旅館仁三郎はいわゆる漁師宿で、釣り人や海鮮好きには有名な旅館だ。早起きすると実際に漁の見学や体験もできる。夏場は近くに海水浴場があるし、夜は星も見れるのでここで1日遊べてしまう。素晴らしい。
三瀬駅
三瀬駅は先ほどの国道7号線の海岸線から少し山側に入ったところにある。それまでずっと並走していた日本海や国道7号線からサヨナラバイバイしてから少し経った時に出てくる駅だ。五十川に比べると少し大きい集落になる。
この地を流れる三瀬川。五十川と同じく熊野長峰を源流とする川で、どちらも急峻なため短い。海からほど近い場所にかかわらず淡水を保っている。
お花が咲いていたのでスナップしてみる。このDA35mm F2.8というレンズは、遠景だと凡レンズなのに近接になると「突然お前どうした!?」と言わんばかりにキレキレになって笑う。さっきまでと同じレンズとは思えないw
実はZ7のバッテリーがなくなってしまい、サブのK-3IIIで撮っているわけだが、DA35mm F2.8は遠景がいまいちシャッキリしない。さっきから眠い絵が多いのは天気や時間だけではないのだ。
その眠い子DA35mm F2.8だが、近距離になると突然覚醒する。この妙な癖が好きで、なんとかうまく使いこなせないかと持ち出し機会が増える傾向にある。
旅館・坂本屋。創業が享保時代という老舗で、庄内藩主酒井忠器に昼食を献上したという逸話があり、藤沢周平作品「三年前」にも登場する。
和食の評価が高く、食事のみ利用もできるという。これはうれしい。
この地方の郷土料理に「どんがら汁」というものがある。寒鱈をぶつ切りにして、骨やモツなども入れて鍋に煮込む味噌汁なのだが、これが美味い。ネギと白子がポイントだ。筆者は母からレシピを教わったのだが、家庭料理なので家ごとの味があるのだと思う。
この坂本屋の「どんがら汁」は絶品との評判だ。雑に作ってもそこそこ旨いのだが、プロの方が最高の食材作るとどれだけ美味しくなるのかはちょっと興味がある。
まとめ
今回は旧温海町方面を探索してみた。前から気になっていたところなのでこうして足を踏み入れると新たな発見があって興味深い。鶴岡は広くなりすぎたので1回来ただけじゃマジで探索しきれないボリュームなので困る。そしてバッチリ楽しいという。
リンク
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