ファッション派にもおすすめな富士フイルムXマウントカメラの魅力を語る。
概要
富士フイルムXマウントの歴史は割と新しい。その歴史は2011年に発売された初代X100を前身とする。これはレンズ一体型のレンジファインダー型デジカメで自社開発APS-Cセンサーを積んでいる。
翌年の2012年にXマウント初号機としてX-Pro1が発売。初代X100のレンズ交換ができるバージョンとして発売したが趣味性が高く高価だった。2014年になると一眼レフ型のX-T1が発売し、この頃から汎用性の高い機種が出始め、事業部も黒字化したことで開発ペースが加速していく。
開発当初から一貫して「デジカメはAPS-Cが最もバランスの良いシステムだ」というこだわりがあり、フラッグシップもAPS-C機となる。そのため展開しているXマウントのレンズはすべてAPS-C規格となり、小型軽量なレンズが多いのが特徴。
ちなみにフルサイズ規格の展開はないものの、Gマウントという中版規格のデジカメとレンズを展開している。風景ガチ勢ご用達だが素人にはお勧めできない。
ちなみに……
Xマウント展開前の富士フイルムはFinepixというブランド名でコンパクトデジカメを中心に展開していた。筆者が初めて触ったデジカメはFinepix F10で、なかなか使いやすかったと思う。今の評価だと名機扱いされており、これはちょっと嬉しい。
しかし何といってもSシリーズだろう。当時の富士フイルムの一眼レフは自社開発ではなくハードウェア設計をニコンに借りていた。中でもS5ProはニコンD200のボディに富士フイルムの魂を宿したカメラで、Fマウントのシステムをそのまま使える富士フイルム機として有名。
D200の描写は黄色味が強いのでポートレート撮影にはあまり向いておらず、Nikkorレンズがそのまま使い回せるので、当時の写真スタジオなどではこの機体がよく用いられた。ただS5は高級機なので実際にはS3が多かったかもしれないが。
長所
富士フイルムXマウント機の長所は以下の通り。
・APS-C機としてシステムが最適化されている ・jpg撮って出しに強い ・デザインが多様かつファッション性が高い ・中華レンズ、外装カスタムパーツが充実 |
APS-C機としてシステムが最適化
富士フイルム機の最大の特徴。XマウントはAPS-C機しかないことがメリットでありデメリットでもある。フルサイズにステップアップできない欠点こそあるが、裏を返せばAPS-C機の段階でも技術の出し惜しみがないため、カメラもレンズも全力投球となる。
キヤノンやニコンはエントリー機やAPS-C機で手を抜くことがあるためこれは好対照と言える。このスタンスはペンタックスにも近いものを感じる。
jpg撮って出しに強い
富士フイルムの上位機種にはX-Trans CMOSという自社開発センサーが搭載されている。これは一般的なデジカメに用いられているベイヤー配列とは異なるカラーフィルター方式が採用されており、ローパスレスでもモアレや偽色が出にくいらしい。
そしてフジ驚異のメカニズムは画像処理にも用いられており、フィルムシミュレーションという機能により、プロビア、ベルビア、アスティアといった往年のフィルムの色合いを再現できる。似た機能は他者にもあるが、名称をズバリ使えるのはフィルムメーカーならではの特権といえる。
この写真はX-T4(X-Trans)とZFC(ベイヤー)の比較だがX-T4の方が発色が濃く描かれている。ダイナミックレンジが広いのかもしれない。
また本体内HDR合成のダイナミックレンジ幅が広く、ネオンやLEDなどの点光源で力を発揮する。ニコン機ではここまではっきり効果が出ない。しかもX-T4の場合軍艦部左部のダイヤルでワンタッチで入れられるので使い勝手が非常に良い。
また小技としてはファンクションボタンにRAWを割り当てておくと、1回だけRAWで撮影できる。同じことはニコンでもできるんだけど、X-T4はシャッターボタン横にFnボタンあるので便利。
ファッション性の高さ
富士フイルムは自社開発の同一のセンサーを共通仕様とし、多様なボディタイプを展開するというラインナップ戦略を採っている。フラグシップ機とコンパクト機のラインナップは珍しくないが、フジは加えて一眼レフ型とレンジファインダー型すら選べる。
レンジファインダー機の場合、現行機ならフラッグシップのX-Pro系、レンズ一体型のX100V系、ミドルのX-E系の3タイプがあり、前者2タイプはハイブリッドファインダーを搭載している。これはOVFとEVFを切り替え可能なファインダーで、フジの誇る 変態 独自技術である。
そして富士フイルムのミラーレス機はファッション性が高い。レトロデザインに落とし込みつつも、AFレンズやズームレンズでも違和感ないように仕上がっている。ニコンZfcがMFレンズしか似合わないが、X-T4はAFレンズでも差し支えない。これは本当見事だ。
またブラックとシルバーの二色展開を行っており、カメラケースやグリップなどの外装用アイテムも多く出ているので、自分好みの一台にカスタムも楽しめる。
中華レンズや外装パーツが充実
富士フイルム機はカスタム性が高い。中華レンズはソニーEマウントの次くらいに充実しており、外装パーツの多さは随一と言える。カメラケース、グリップ、レリーズボタンなど本当むやみやたら多い。
機材道楽に興じたい人はフジ機を一台持っておくとそれだけで楽しめる。その時の気分によってモデルガン感覚で着せ替えができるので本当に飽きがこない。筆者もやはりそうで、見て良し・触って良し・撮って良しのいいおもちゃになっている。これは楽しい。
短所
富士フイルムXマウント機の長所は以下の通り。
・価格設定が強気、供給が細い ・フルサイズへのステップアップはできない ・ソフトウェアがもっさり ・画像消去がやや面倒くさい |
APS-C機「のみ」に対してその金額を出せるかどうか
富士フイルムのミラーレス機はお高い。APS-C機だが他社のフルサイズ機と同じくらいのよいお値段がする。中古のX-T4を買うなら、ニコンのZ6、ソニーのα7IIIあたりのフルサイズ機が買えてしまうので、中古やオークションで超悩むと思う。
そしてもし買ったとしてもフジからフルサイズ機が発売する可能性は低い。センサーサイズが必ずしも正義とは言わないが、フジ機を選ぶ場合、APS-C機「のみ」にその金額を投資するということを念頭に置く必要がある。
また供給が細いのかしばしば品薄状態で入手困難になったりプレミアがつくことがある。フジに限ったことではないが、最近のデジカメは値崩れしにくく待っていてもあまり価格が下がらないため、清水ダイブを決めてさっさと買ってしまった方がいいかもしれない。それがフジなら尚更となる。
UIがあまり良くなく、ソフトがややもっさり
富士フイルムX-T4を触ってみた印象だが、ニコンZfcと比較すると似ているのは外見のみで、設計思想や使い勝手は全く別物のカメラということだ。
フジフイルム機は電源投入からの起動やソフトウェアの動作がややもっさりする。特に不要画像の消去は面倒で、複数のボタン操作が必要なため反射的・直感的にできない。雑にゴミ箱ボタンを連打すれば終わるニコン機に比べるとこの点はかなり億劫だ。
またコマンドダイヤルについては押しボタンも兼ねていて複数機能持たせていたり、ボタンを省いてタッチパネルで済ませているものが多い。ギミックや可動部を兼用すると設定操作に対する依存度も高くなるし、壊れやすいし、実際壊れたらアウトになりやすい。
慣れの問題ではあるし、壊れなければどうということはないのだが、この辺は多少不便でもダイヤルはダイヤル、ボタンはボタンと分けているニコンの方がリスクヘッジができる分信頼できるかな。この話は以下の記事で触れている。
こんな人にオススメ
X-T4ユーザーから見た富士フイルム機のおすすめポイントは以下の通り。趣味性が高くAPS-C機で完結するため、サブ機として運用するのがおすすめ。
・ポートレート撮影を多く行う人 ・フィルムカメラに思い入れのある人 ・APS-C機でもいい人(または複数マウントユーザーの人) ・機材道楽を楽しみたい人 |
フィルムカメラに思い入れのある人へ
フジのミラーレス機はフイルムカメラに思い入れのある人はオススメ。フィルムシミュレーションはかなり良くできていて、本当にプロビアやベルビア、アクロスっぽく写る。筆者はフィルムカメラの経験は薄く、多少撮っていたというレベルだが本当にそう見える。記憶色というやつだ。
またフジは伝統的に肌の色が綺麗に出やすいと言われていて、ポートレート撮影に定評がある。ニコンのボディを借りたS3やS5 Proという機種が、当時のカメラスタジオで当時使われることが多かったのだが、Xマウントで独り立ちした現在もその長所は健在といえる。
ファッション好きにもオススメ
前述の通り、富士フイルム機やファッション好きにオススメ。レンジファインダー機がありしかもブラックとシルバーの二色展開、中華レンズや外装カスタムパーツも充実とかなり自由度が高い。
ソニーがガジェット的にガチャガチャで遊べるカメラなら、フジはファッション的に着せ替えを楽しめるカメラといえる。レトロデザインはニコン機もあるが、フジの方がより遊べる範囲や選択肢が広いので好みの見た目に作りやすい。
何を隠そう筆者も見た目全振りで遊んでいる。黒檀グリップ+ビルトロックスはいいぞ。
オススメ機種
富士フイルムXマウント機についてはなるべく世代が新しい機種を買った方がいい。レンズ交換型デジカメを開発している歴史がまだ浅いせいか世代交代が早く、過去機のいいとこ取り的なモデルが定期的に出るからだ。X-T4はその意味ではひとつの完成形となる。
古い機種は発展途上な機体が多いため、型落ちの中古品を購入すると手振れ補正が無い、バッテリー容量が少ないなど、何かがオミットされた状態になりやすい。ここでは完成度が特に高いX-T4をベースにその後継機や発展形をピックアップ。
X-T4(2020年発売)
まずはX-T4。このモデルはXマウント機としてはひとつの完成形を迎えたモデルとなる。汎用性に富んでおり目立った弱点が少なく使いやすい。静かで上品なシャッター音も好感が持てる。
この機種はX-T3とX-H1足して2で割らない性能がある。X-T3と同様の画像処理性能と、X-H1より優れた手振れ補正機能を兼ね備え、大型バッテリーの採用で稼働時間の短さも克服している。
他方今まで異なった点もありチルトアングル液晶ではなくバリアングル液晶となっている。ここは賛否両論となっており、後継機のX-T5でもとのチルトアングルに戻っている。また高機能化に伴い本体がやや大型化しており、この点を従来ユーザーから指摘されることもある。
X-T5(2022年発売)
X-T4の後継機だがその性格や実態はかなり異なる。
まず画素数が大幅に増しており、APS-C機でありながら4000万画素を実現している。そして液晶も歴代モデルと同様のチルトアングル液晶に戻っている。この特徴から先代のX-T4がオールラウンド機であるの対して、こちらは高画素機であり静止画に向いたモデルといえる。
その他の改善点としては本体がX-T4よりも小型化した点。X-Tシリーズは世代を追うごとに大型化していて、X-T4でかなり大きくなったが、X-T5で一転横幅がかなり減ってコンパクトになり先祖帰りした。
X-H2s(2022年発売)
一方のX-T4の実質的後継機はコチラになる。X-T4の性能をそのままに、プロ機であるX-H1のボディを装って次世代機として正常進化させた機種となる。CMOSセンサーと画像処理エンジンはX-T4よりも一世代新しくなっている。
X-T4と比べるとグリップが大型化して握りやすくなった他、ダイヤルなどの操作系がX-H1同様に現代化したため、富士フイルム機としては最も実用的な機種となっている。画素層も2616万画素とほぼ同等なので高感度撮影に強く、液晶はX-T4同様バリアングルのため動画撮影にも向く。
兄弟機にはX-H2があり、こちらの基本スペックはX-T5に準じたものとなっている。
X-S20(2023年発売)
X-T4とほぼ同等の性能をキープしながらよりコンパクトになった1台。縦幅はかなりコンパクトになったが、グリップは厚さを増しているのでホールドしやすい。パンケーキレンズと合わせたい一台。
これのいい点は、対応バッテリーがX-T4やX-T5と同様のNP-W235となったことでランタイムが大幅に改善した点。公称容量2200mAhとかなり長持ちするため、よほど撮りまくらない限りはスペアバッテリーは不要となった。
旧型機のX-S10は使いやすいもののバッテリーが従来のNP-W126Sで、公称容量1260mAhしかなかったため、X-H1と同様のランタイムが短い弱点があったが今回のアプデで克服されることになった。搭載バッテリーがNP-W126Sの機種は手振れ補正がない機種を選んだ方が良い。
まとめ
富士フイルムXマウント機は、X-Transシステムによる諧調性や、ファッション性の高さが魅力的なカメラとなる。趣味性が高くAPS-Cでシステムが完結するためサブ機としておすすめ。
筆者はペンタックス機、富士フイルム機、ニコンFマウント機と趣味機が3台もある道楽者だが、Xマウントのレンズは例のビルトロックス三兄弟しか持っていない。他はラオワ(Laowa)レンズをマウントアダプタ噛ませて使っている状況なので、なんと純正レンズを1本も持っていない。
富士フイルムはミラーレス機であるがゆえこういったユルい遊び方もできる。手振れ補正とダイナミックレンジを活かしてスナップ夜景の友として連れて行ったり、外装パーツを組み替えて着せ替えを楽しんだりと、こんなんでも十分エンジョイできてしまう。
ガチ勢からすると怒られてしまうかもしれないが、現代的な楽しみ方ができるデジカメだと思う。このおおらかさはサードを締め出しているニコン・キヤノンも見習ってほしい次第。
とはいえ純正のフジノンレンズも見どころがある。神レンズと名高いXF35mm F1.4Rは有名だし、パンケーキレンズのXF27mm F2.8Rも気になる。ペンタックスのリミテッドレンズとちょっとばかしキャラがかぶっている感もあるが。
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