引き続き夜の新宿を散歩。タイトル詐欺に終わった前回を反省して虹色フレアに挑戦。果たしてその結果は…!
NIKON Z7に装着
前回に引き続きニコンのミラーレス機Z7に付けている。MFオンリーだが操作性に不満はなく、ピントリングもトルクがあるため。MFフォーカスレンズと同じ感覚で扱える。
このレンズで撮った写真
新宿は町全体が明るいので思いの外点光源が少なく、フレアになるまでもなくフツーに撮れてしまう。時間もそこそこ遅いのでどうしたものかと思ったが、ここはやはりあの場所へ行くべきか…。
あの場所へ!あの場所へ行きさえすればッ!
新宿ゴールデン街
この新宿ゴールデン街は、戦後の闇市がルーツとなった由緒正しい飲み屋街だ。
80年代後半のバブル期には地上げにより存続の危機に立たされ、一転バブルの崩壊した90年代は不景気からゴーストタウンのようになったが、00年代からは新規出店によって街の新陳代謝が進んだ。
2020年は新型コロナウイルスの流行で再び苦境となったが、5類に見直された現在は人通りも賑わっている。歓楽街の浮ついた雰囲気とは裏腹に幾度となく困難を乗り越えてきた芯の強さのある街で、それが人々を引き付ける魅力になっている。
町全体は明るく監視カメラも設置されているため治安は保たれており、外国人観光客も多い。日本語よりも英語や中国の方が多いくらいだ。きっとパブ文化があるから飲み方のスタンスが近くてしっくりくるのだろう。
こうした歓楽街は横浜にもあるけど流石キングオブ飲み屋街。本場だけあって貫禄が半端ない。この間のラーメン博物館行った回で内装が凝っているという話をしたが、あれはかなり忠実に再現しているのがわかる。
blueは下戸なのでこうした飲み屋街は付き合いでたまに行く程度だが、非日常的な風景はとても楽しい。この扉の向こう側にはどんな世界が待っているのだろう。
路地裏
本日の一押しスポット。ゴールデン街はそれぞれ〇番街という形で縦に伸びているが、横に移動するときはこうした路地裏を通るとショートカットできる。
これがたまたま虹色フレアの発生する条件と噛み合っていて非常に絵になる。ともすれば無機質で退廃的な風景も、虹色が加わると途端にスチームパンクな雰囲気に。
このレンズを使って気づいたこと
絞りリング
絞りリングはクリック感があるタイプ。プラスチック鏡胴だがたわみや引っ掛かりなどはなく、スムースに回るため操作時のストレスは特に感じない。
今回はZ7にマウントアダプタ経由で使用しているためAFは使えないが、ピントリングに適度なトルクがあるのも相まってほぼMFレンズと同じ操作感で使える。
抜けの良さ
このレンズのいいところは、虹色フレアが出やすくなっているものの、白色フレアは出ないように抑えられている点。フレアの出やすさとは裏腹にクリアで抜けがよい描写を楽しめる。
これは逆光だと白飛びしてしまってまともに撮れなくなるオールドレンズとは明らかに異なるもので、盛大にフレアを出しつつも実用性を損なっていない。
『味わい深い描写を生み出すゴースト以外を極力抑えるよう各レンズ面のコーティングを再チューニングしました』
PENTAX公式HP
というペンタックスのコメントは決してフカシやプラシーボではなくむしろ謙遜なレベル。
このフレアはオミットすることも可能でF2まで絞れば消える。ただレンズとゴーストは残るようだ。普通のレンズとほぼ変わらない程度の大きさだけど。
被写体とフレアのどちらに合わせるか
ただこのレンズにはひとつ問題があって、撮っていると「構図に重視するか」と「フレアを重視するか」でしばしば迷うことがある。
カメラに上下左右に微調整するとフレアが移動するので、実際撮っていて被写体と虹色フレアのどちらに構図やピントを合わせるか迷う場面がいくつかあった。これはなかなか楽しいが咄嗟の時はなかなか焦る。楽しいw
EVFはフレアを目視できる
ミラーレスカメラの場合は、フレアの発生をあらかじめEVFやライブビューで目視が可能。フレアが発生するかどうかは事前にわかるし、フレアの位置や形、大きさを微調整しながら撮影できる。
対して一眼レフカメラはOVFなので太陽光を直視できない制約があり、背面液晶のライブビューも画面と実際に撮れる写真には微妙にズレがあるので、ややコツがいるかも。
虹色フレアを出す方法?
何回か試してみたところ、虹色フレアの出し方がわかってきたような…わかっていないような。
点光源であること
フレアは点光源の方が出しやすい。いわゆる「硬い光」「柔らかい光」というやつで、硬い光の方がフレアは出やすい。光を表す単位にはルーメン、カンデラ、ルクスという概念があるそうだ。
ルーメン(Lm) | 光の総量の単位。全体の光の強さ。 |
カンデラ(Cd) | 光の中心光度の単位。放射された光の角度。 |
ルクス(Lx) | 光で照らされている面の明るさの単位。 |
ここでフレアに関係してくるものはルーメンとカンデラで、まずルーメンが単純に大きい光源(太陽など)はフレアが出やすい。これはカメラ側で露光時間やISO感度を大きくしても同じ。
次に同じルーメンなら光が収束されて照射角度が狭くなるとカンデラも高くなり、光源の表面積が小さいほど「硬い光」となるのでフレアが出やすくなる。レフ板やディフューザーで光が拡散されれば逆もその然り…という認識でいる。
blueは文系なので理屈を突っ込まれると弱い。けど衛生管理者、ビル管理士、色彩検定、インテリアコーディネーターあたりのテキストにはそんなようなことがかいてあったのでまちがっていはいないはず…!(ほんとぉ?)
光源は四隅の対角線上に置く
光源はなるべく中心から遠い位置(周辺)に置くとフレアが出やすくなるようだ。
直進した光はそのまま対角線上の位置に光輪(フレア)を結像するのだが、光源が中心に近づくほど対角線上の距離が短くなるため光輪は小さくなる。このため光源を画面中心に置いても、光輪は光源と位置が重なり、かつ小さくなってしまうのでは画面上は生じない。
これはちょっと自信がない。なんとなくやってたらそうなったというだけで、なんでそうなるのかは理解していない。感覚や体で覚えたことをロジックで説明するって難しいよね。
つまり…どういうこと?
フィラメント風のLED電球のような強くて硬い光を、中心から離れた位置に配置することで大きな虹色フレアを発生させることができる。これは撮っているうちにとなんとなくわかるようになってくる。
C-PLフィルタの薄枠を回してちょうどいい偏光具合を探す作業に似ている。こちらは構図とのバランスを取りながらカメラ本体を上下左右に微調整しながらフレアの位置や大きさを調整していく感じ。
まとめ
敢えて意図的に虹色フレアを出すためのチューニングがなされた斬新なレンズ。使ってみると分かるが点光源があるといとも簡単に虹色フレアが出る。
白色フレアは抑えられているため飛びにくく、クリアで抜けが良い描写という一見矛盾しているかのような特性を持っている。しかしながらベースが枯れたレンズということもあって奇を装いつつもしっかり映るのがポイント。
なんともペンタックスらしいユニークなレンズといえる。日中に撮ったとき、APS-Cで撮ったときなども興味深くこれは色々試してみたくなる。後編に続く。
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