横浜にはホタルはいない。──そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。
蛍の夕べ in 横浜 ①四季の森公園
6月と言えば梅雨シーズンだ。ジメジメして鬱陶しいが写真的には結構おいしい時期で、紫陽花(アジサイ)などの花が見ごろを迎えるのだが、光り物オタクとしては外せない被写体を撮影するチャンスでもある。ホタルだ。
ホタルは繊細な生き物で清浄な水辺にしか棲めない。そのため神奈川県ではちょっと厳しいかと思いきや意外とそんなこともなく、横浜市内でもいくつか観賞スポットがあったりする。
そんなわけで、カメラの技能上げついでに横浜のホタルスポットをいくつか紹介。
アクセス
JR横浜線中山駅南口から徒歩20分。南口駅前のマクドナルドのある通りを抜けて、県道109号線の横断歩道を渡り、しばらく歩いた二斜路を左(進行方向から見た場合右)に曲がると北口入口にたどり着く。
道中はコンビニなどはないので食糧など必要なものは駅前で買っていくといい。自販機は公園内にもあるので水分補給は可能。
おすすめスポット
おすすめスポットしては二カ所。しょうぶ園からしばらく南方向に歩いて行った、展望広場へ抜ける切り通しの小川のあたりは大量発生しやすい。またしょうぶ園も林の近くにいることがある。
他にもあし原湿原の方などまだポイントがあるかもしれない。
撮影機材
Z7にAF-S NIKKOR 24mm F1.4Gの組み合わせ。ミラーレス機になってから暗所でも無限遠を出せるようになったので、星景撮影やホタルの撮影は敷居がグッと下がったと感じる。どちらも型落ち品なので割とお手頃価格で入手できる。
一眼レフ以前の時代は無限遠が決まるレンズ(オーバーインフにならないレンズ)がないと面倒で、明るいうちに現地入りして無限遠を出し、そのピント位置を固定するためにテープで止めて撮っていた。当然動くとピンズレしてしまうため扱いにも気を遣った。
この四季の森公園は夜でも明るいため、公園内の風景にAFして無限遠にピントを合わせ、それからMFで撮っている。この間の三浦海岸の星景撮影は同じ方法で撮れたのでこの公園も何とかなるだろうと思ったが、実際になんとかなっている。地方のようなガチの暗闇は分からないが。
レンズに関しては、暗所撮影になるのでF1.8以上の大口径レンズの方が撮りやすいと思う。ホタルは割と気分屋で動き回るため広角レンズの方がフレームインしやすい。初心者はこちらの方がいいだろう。筆者も初挑戦なので広角にしておいた。
四季の森公園
園内風景
四季の森公園は横浜市緑区にある公園で、ホタル観賞スポットとしてはそこそこメジャーなポイントとなる。ホタルのシーズンは毎年6月初旬~中旬頃で、この時期は家族連れなどで賑わう。
駐車場は土日のみ有料となる。なおホタルのシーズン中は駐車場の営業時間が延長されており、20:50まで駐車しておくことができる。JR横浜線 中山駅から徒歩20分程度のところにあるので歩いてくることも可能。その場合は20:50を過ぎても粘ることができる。
園内風景としてはこんな感じ。ホタルは水辺に棲むのでしょうぶ園や沢のあたりにいることが多い。
さてこの写真は一見普通のスナップ写真のように見えるが、少し違和感がある。これに気付いた人は鋭い。ホタルの軌跡や懐中電灯はこれほど明るく写らないからだ。
それもそのはずで、この写真は21:00頃に三脚を用いて撮影したものだ。当日は曇天だったので明るく、ホワイトバランスを3500Kに下げて、ISO800、F1.4、6秒程度の露出でこんな感じに写っている。昼間にまた来るには少々遠い場所なのでこれはこれで助かった。
実際の明るさ
実際の公園内の明るさはこんな感じ。この公園は街灯がほぼない点は好感が持てる。自販機も環境配慮型で金額ボタンしか光らない仕様になっており、スマホをかざさないとラベルが見えない。
見事な仕事だと感心はするがどこもおかしくはない。……本当はコーヒーを飲みたかったが麦茶が出てきてちょっとヘコんでいる。麦茶かぁ……。そんな心持ちの一枚。
ホタルの夕べ
さて、目当てのホタルの写真だがこんな感じになった。直前に夕立があったことで気温が低かったこと、雨天だったことからやや少なかったかもしれないが、初めての撮影にしては上出来だろう。
手前のポイントから暗がりに移動したところ。暗い場所の方がホタルに軌跡とのコントラスト(明暗差)がより大きくなるため、はっきり目立ちやすい。
これらの写真は比較明合成で撮っているため、実際にはもっとたくさん撮っている。手慣らしやピンボケ、合成ズレなど失敗写真もあるのでなんだかんだ結構な枚数撮っているし、カメラもそれなりにバッテリーを消費している。
比較明合成
比較明合成とは多重露出の一種で、複数の画像を比較して明るい部分だけを合成して足していく方式だ。打ち上げ花火や車の光跡、星景撮影などでよく用いられる方法で、この方法なら露出がオーバーにならない。
この場合では5枚の画像を合成しており、全体としての露出が同じ程度ならその部分の明るさは変わらず、ホタルの通った軌跡だけが上書きされていく。つまりホタルの軌跡は30秒露出×5枚分となるが、全体露出としては30秒×1枚のみとなるため暗さを保つことができる。
この比較明合成撮影はレタッチソフトで行うのが一般的だが、実はカメラボディ本体でもできる。星景撮影は百枚程度の写真をインターバル撮影するので、レタッチソフト(PC)で行うのが一般的だが、ホタルのように数枚程度ならカメラ本体で済ませることもできる。
大切なのはホタルや星景撮影を行う際には長秒時ノイズ低減をオフにすること。これがオンにしたままだとノイズ低減処理を行うため次の撮影をすぐに行うことができない。
ホタルってどんな虫?
甥っ子(5)に「ホタルってどんな虫?」と聞かれたので「ケツにLEDが付いてる虫だよ」って説明したら妹に「変なことを教えないで」って割とマジメに怒られた。何故なのか。
たとえがまずかったということか。なので「ケツにサイリウム虫」に訂正をしておいた。ルミノバの方がよかったかな。
原理
発光物質であるルシフェリンと、酵素のルシフェラーゼ、それにATP(アデノシン三リン酸)が反応し、その中間物質が酸化することで行われる。
酵素ルシフェラーゼは触媒で、呼吸によって得られる酸素を得てルシフェリンが酸化する過程でエネルギーを得る。オキシルシフェリンはエネルギーの高い状態(励起状態)で、安定化する過程でエネルギーを放出するのだが、そのエネルギーに光が含まれるため発光するというわけだ。
ホタルやイカ、キノコなどが自発光するメカニズムを生物発光というが、中でもホタルのエネルギー反応は9割程度が光に変わるためあまり熱を出さず、最も発光効率がよいと言われている。そのためホタルはかちかち山のタヌキとは違ってケツの光が原因で熱暴走を起こすことはない。
※なおこのサイトにかなり正確な説明があったのでご紹介。非常に興味深く素晴らしい。だが甥っ子(5)じゃちょっと厳しいか。というか筆者(文系)も厳しい。
まとめ
この日のベストはこれかな。ホタルにはピークタイムがあるらしく、関東地方なら日の入り直後の7時~8時くらいが活発でそれを過ぎると休憩時間に入ってしまい、次のピークが結構遅いので割と時間との勝負になる。これも現地入りしてすぐの写真だ。
ホタルは背景と軌跡の明るさのバランスが難しいのでレタッチ必須の被写体だと思う。ホタルと背景のどちらに露出を合わせるかという問題がある。背景については、撮影ポイントによって明るさがまちまちで、見物客の照明が入ってしまったりするため不確定要素が多い。
また周囲のへのエチケットとして背面液晶が光らせないようにEVFで露出を決めることになるため尚更難しい。なのでレタッチでその辺は調整することになるのだが、こうやってjpg撮って出しでどこまで追い込めるかというのもまた一興で、うまくハマった時の喜びもひとしおだ。
リンク
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