ペンタックスの超有名オールドレンズについてレビュー。
スペック
焦点距離 | 55mm(換算84mm) | レンズ構成 | 6枚5群 |
最小絞り | F1.8 | 絞り羽根枚数 | 9枚 |
最大絞り | F16 | 寸法 | 57×36mm |
最短撮影距離 | 45cm | 重量 | 205g |
フォーマット | フルサイズ | フィルター径 | 49mm |
どんなレンズ?
ペンタックスがまだ旭光学工業と呼ばれていた時代のレンズで、1957年に発売されたフィルムカメラ「アサヒペンタックス」用の標準レンズ。淡いウィスキー色のコーティングが美しい。
オールドレンズの中でも特に有名で、機材オタやペンタックスユーザーならずとも一度はその名を聞いたことのあるレンズ。ネット掲示板などで超琢磨ーとか呼ばれているアレ。
玉数が多く入手しやすいことからオールド入門用として最適で、絞り開放で撮ると虹色フレアが出ることからも人気が高い。前から気になっていたが、同じく虹色フレアが出るFA50mm F1.4 CLASSICを入手したことが呼び水となり、元ネタを試してみたくなって入手。
前期型・後期型
このレンズにはバージョンがある。ざっくり分けると以下の3種類(+1種類)に分類される。
オート タクマー |
1958年 | スーパータクマーの前身となるモデル。前期型のものはいわゆるゼブラ柄が特徴で珍しい。またこの前期型モデルは最短撮影距離が55cmとやや遠い。 |
前期型 | 1963年 | オートタクマーから改良された直後のタイプ。厳密にはさらに初期型(1962年)と前期型(1963年)に分けられる。 シングルコート故に逆光耐性が低くハレーションが出やすいが、虹色フレアが出せるのが特徴。後述するアトムレンズは使用されていないため、黄変はあまり見られない。 |
後期型 | 1965年 | アトムレンズが使用されされているのが特徴。アトムレンズとは放射性物質の酸化トリウムの配合されたガラスでできたレンズのことで、屈折率を上げるために用いられた。 このレンズは経年によって黄変を起こすため、イエローやオレンジ掛かった色味で写るため、レトロでノスタルジックな雰囲気に仕上がる。虹色フレアはこのタイプでも出る。 |
SMC | 1971年 | 正式には「スーパーマルチコートタクマー」という。ペンタックスではおなじみのスーパーマルチコートが施され逆行性能が向上している。虹色フレアは出ないことが多い。 後にペンタックスブランド化した際にSMCタクマーとなった。 |
急に歴史の勉強が始まった。高度経済成長期ど真ん中で感慨深いものがある。このレンズはきっと歴史の生き証人としていろんな風景を見てきたに違いない。
お店の人いわく前身となるオートタクマーで7期、前期型で4期、後期型で5期あるそうで、素人だと識別も難しくシリアルナンバー(ロット)による違いもあるため、さながらポケモンの個体値厳選みたいな状況になっている。
しかも大昔のレンズだけあってコンディションも様々で、ジャンク状態のままのものからオーバーホールされたもの、改造が施されたものなど千差万別となっている。これもうわかんねぇな。
シルバーのスーパータクマーだと…!?
今回の個体は後期型とになる。どの期までなのかはちょっとわからない。お店の人いわくのオーバーホールとヘリコイドのグリス塗布を行い、紫外線照射でアトムレンズの黄変を軽減している個体らしい。
目を引くのは、レンズ鏡胴が本来存在しないシルバーになっていること。いわゆる白磨きをしたもので、耐水ペーパーがけしてアルマイトを落とし、ピカールやフェルトバフなどで磨き倒したものと思われる。その意味ではカスタム個体に近い。
やってみるとわかるけどこれすごく根気がいるし、そもそもレンズの分解・組立が素人には難しいので割とオンリーワンな仕様だと思う。こういうカスタム個体はモデルガンにもよく見られるが、個人的には好きなんでついポチってしまう。
にしても、金属用の鏡面仕上げ材って今時何が主流なんだろう。20年前くらいに東急ハンズで買ってきた「メディコム キングブライトSM」の使い残しがblue宅にはあって、未だに使っているけど、これ代替品ってあるのかな。。
入手方法
ガチのオールドレンズであり、今から60年前の代物のため入手方法は当然ながら中古のみ。
ただし市中在庫がほぼ無尽蔵にあるレンズのため、フィルムカメラ専門店、中古カメラ屋、ネットショップ、メルカリヤフオクなどあらゆる方法で簡単に入手が可能。…コンディションや写りなど厳選しなければの話だが。
もし厳選するつもりがなくても非常に古いものなので、可能なら実物を触らせてもらって試射してからの方が無難。点光源を撮らせてもらえばその場でフレアも確認できる。
M42マウントって?
ウルトラマンかな?と思ったけどどうやら違うらしい。M10ボルトとかM6ナットなど呼んだりするあの「M規格」(メートルねじ規格)と同じで、つまり直径42mm、スクリューのピッチ幅が1mmなのでM42マウントと呼んでいるのだ。
スクリューマウントは現在のバヨネット式のものよりも前の技術で、いわゆるユニバーサルマウントとして国際規格上のデファクトスタンダードになっていたそうだ。そのため、日本製、旧東独製、旧ソ連製などの会社のレンズを使うことができた。
「できた」と過去形なのは、今現在の一眼レフやミラーレスカメラでは廃れてしまってしまった技術規格のためで、ゆえにそのまま使うことができない。使用するためにはM42用マウントアダプターが必要となる。
これは各社それぞれ存在している。ここではペンタックスKマウント用(純正)、ニコンZマウント用(焦点工房)、フジXマウント用(K&F)を紹介する。
虹色フレア
虹色フレアはスーパータクマーやヤシノンなどオールドレンズの代名詞にもなっていて、逆光下や点光源などの際に円を描くようなエフェクトが発生する。
恐ろしいことにこの虹色フレアは個体差があり、そのレンズで実際に撮影してみるまでわからない。さながらポケモンでいうめざパ厳選みたいな状況になっており、理想のフレアを求めるまでガチャやマラソンを続ける猛者も少なくないという。
良心的な業者は実際の撮影写真を添付してフレアの出方を教えてくれるが、派手で綺麗な出方をする個体は人気が高く、オークションの終了付近では競りが過熱して通常の相場を大きく超える落札価格が付くことも珍しくない。
このレンズ自体は普通の中古品なら7000円くらいから入手できるが、本体美品かつ素敵フレアも出る個体だと高値が付き、55mmで優に4万円台まで上昇したのを見たことがある。なんという苦行…オールドレンズ廃人待ったなし。
しかしM42マウントはまだ優しい方で、オールドレンズの本家本元のライカでは用途も価値もよくわからないレンズに数十万、数百万の値が付いていることはもはや日常風景になっている。blueさん的にはちょっと別世界かなぁ。
厳選作業が苦行な人向け
現代のレンズになるが、同じペンタックスからSMC PENTAX-FA 50mm F1.4 CLASSIC というものが出ている。
これは既存品をベースに2023年6月に新発売したレンズで、虹色フレアが意図的に出やすいなるようなコーティングを施されており、濃くはっきりした虹色フレアが楽しめることができる。
虹色フレア以外のハレーションの原因となる白色フレアなどはカットされているため使いやすい。ペンタックス機ならオートフォーカスが使え、新品購入できるのでコンディションの悪さもなく、製造工程が均一なため個体差もない。
マラソンやガチャ、オークション合戦に疲れてしまったらこちらで手を打つのも一考。
まとめ
店員さん「ここでそうびしていくかい?」⇒ 装備していった結果ww
新装備品をその場で試したくなるのはカメラあるある。そんなドラクエ感覚で撮った写真がコチラ。
NIKON Z7に装着
NIKON ZFCに装着 ※APS-C換算75mm
いずれもニコンのミラーレス機で撮ったものだが、絞り開放でフレアが発生している。古いものだしあさぞ甘々ふわふわで眠い写りと思いきや意外と健闘している。APS-Cでも虹色フレアはガッツリ出る。
オールドレンズは初めてだけどこれはなかなか面白そうだ。もう少し触ってみたい。次回に続く。
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